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連載・特集

[ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 核ある限り みな当事者 シンガー・ソングライター 瀬戸麻由さん(31)=呉市

  ≪広島で音楽活動をする傍ら、「核政策を知りたい広島若者有権者の会」(カクワカ広島)メンバーとして核兵器廃絶の運動にも取り組む。呉市出身の被爆3世。6月にオーストリア・ウィーンであった核兵器禁止条約の第1回締約国会議に合わせて現地入りし、世界の若者と「核なき世界」へ意見を交わした。≫

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 核兵器の使用が懸念される事態は起こり得ると、どこかで分かっていました。安全保障を「核の傘」に頼る日本に生きる私たちは、核兵器が存在する社会の当事者。「核兵器がある限り、いつか使われる。廃絶しかない」と伝える活動をしてきたから。

 でも、いざ世界を核兵器で脅すロシアを目の当たりにすると不安が強い。これまで、どれだけ実感を伴って訴えてきただろうか。私自身も認識が甘かったと感じています。

 カクワカの仲間と一緒に、いまできることをするのが、私なりの怖さの逃がし方。10月に、核兵器の製造や核実験で被害を受けた「世界のヒバクシャ」を知るウェブ学習会を始めました。今後、禁止条約の締約国会議で出会ったフィジーやニュージーランド、マーシャル諸島の若い活動家も学習会に招く予定です。

 ロシアのプーチン大統領たち政治指導者にも、痛みを受けた人の声を真摯(しんし)に聞いてほしい。とりわけロシアは今まさに、ウクライナの市民や自国の兵士の命を奪っています。守るべきは国家ではなく、そこに住む一人一人。自らの意思決定でどれだけの人が苦しむのか想像してもらいたいです。

 広島は77年前、国が始めた戦争の末に原爆を落とされました。多くの人は被爆地を訪れれば、ショックや憤り、絶望を感じるでしょう。そんな大切な感情と向き合う時間をつくれるよう、私はこれからも自作した歌を届けます。核兵器廃絶と平和の実現を今まで以上に強く願って。(聞き手は宮野史康)

(2022年12月18日朝刊掲載)

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