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人形「撤去後保存を」 原爆資料館有識者会議 企画展活用案も

 原爆資料館(広島市中区)の全面リニューアルに伴い、広島市が本館から被爆者の姿を再現した人形の撤去を計画している問題で、資料館の展示見直しを助言する有識者検討会議は7日、人形撤去を再確認する一方、撤去後も引き続き資料館で保存するよう市に求めることを決めた。企画展などでの活用を求める意見も出た。(岡田浩平)

 資料館に隣接する広島国際会議場であった会合には、委員11人のうち10人が出席した。

 被爆者の遺品など「実物」重視とする展示見直しについて、今中亘委員長は「人形に勝る方法で被爆の惨状を伝えようと考えている。(人形撤去の)結論を覆す必要はない」と述べた。他の委員から異論はなく、本館の耐震改修工事に合わせて2016年3月ごろに撤去する市の方針をあらためて確認した。

 その上で、資料としての保存を前提に、各委員から「企画展示に生かしては」「資料館の展示資料の歩みを伝えるコーナーを作ってはどうか」といった提案があり、引き続き検討課題とした。

 市によると、昨年12月24日までに撤去反対の電話やメールが577件寄せられた。撤去反対の署名活動を続ける佐伯区の会社員勝部晶博さん(43)は「実物資料に向き合う手掛かりとして、常設展示すべきだ。保存するだけでは納得できない」と話した。

 この日の検討会議では展示資料の解説文の在り方も話し合った。原子力の「平和利用」を「民生利用」と書き換える案や、被爆者が負った「心の傷」の説明を加えるべきだなどの指摘があった。

被爆者の人形
 原爆資料館本館に入ってすぐの場所にあり、大人の女性、女学生、男児の3体。前方に突き出した両腕から、やけどの皮膚が垂れ下がり、がれきの中をさまよう姿を再現している。今の人形は1991年に設置。先代のろう人形は73年に据えられた。原爆資料館本館は2017年度まで耐震改修工事をし、18年度に東館を含めて全面リニューアルする。

(2014年1月8日朝刊掲載)

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