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[2023広島サミット] G7 資料館視察へ調整 政府 被爆の惨禍訴え

 政府は、来年5月に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせ、各国首脳による原爆資料館(広島市中区)の視察を日程に組み込む調整に入った。被爆の惨禍に触れる貴重な機会として地元の広島県、広島市から岸田文雄首相が要望を受けていた。G7首脳そろっての訪問が実現すれば初。政府は核兵器を持つ米国、英国、フランスを中心に視察実現の働きかけを強める構えだ。(樋口浩二)

 政府関係者によると、サミット会期となる来年5月19~21日のいずれかに、ドイツ、イタリア、カナダを含む各国首脳を首相が案内する方向で検討を進めている。ウクライナを侵攻したロシアが「核の脅し」を繰り返す中、G7で結束して核使用に反対する姿勢を打ち出す狙いもある。

 「核兵器のない世界」を掲げる首相は、世界の政治指導者に被爆地訪問を呼びかけており、原爆投下がもたらした惨禍を遺品などで伝える資料館の視察は重要だと位置付ける。今年3月にはエマニュエル米駐日大使を案内。広島サミット時の視察に関しても今月13日、官邸で面会した松井一実広島市長と田上富久長崎市長に調整する考えを示した。

 調整では米英仏の意向が鍵を握る。とりわけ首相が気にかけるのは同盟国の米国だが、政府・外務省内にはバイデン大統領の視察は「可能」との見方が強い。バイデン氏は現職米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏の下で副大統領を務めた。そのオバマ氏の資料館視察は約10分間で、様子は公開されなかった。

 広島サミットに向けて広島県・市は、各国首脳による被爆者との面会も求めており、実現の可否が焦点となる。オバマ氏の訪問時は、原爆慰霊碑前で広島県被団協前理事長の故坪井直氏と言葉を交わすなどした。政府は今後、米英仏などの反応を探りながら調整を図る構えだ。

(2022年12月22日朝刊掲載)

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