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続 年金もらい忘れていませんか? 柴田友都 <9> 足りない加入期間 補う記録発見

 今回は、福山市のT子さん(65)から2021年にいただいた遺族年金の相談です。08年に他界した義母S江さんは、夫U雄さんを1969年に亡くし、何度もT子さん夫妻と社会保険事務所や市役所に足を運んだとのこと。しかし、ほんの少しだけ加入期間が足りないために遺族年金をもらえず、ずっと悔しい思いをしていたのだそうです。

 そこでT子さんは、年金調査を続けている私への相談を「最後のとりで」と決心して連絡をくださいました。「ぜひ調査をお願いします。もし受給がかなわなかったとしても、義母は天国で喜んでくれると思います」とT子さん。その思いを聞き、調査を引き受けることにしました。

 まず、U雄さんの厚生年金記録の確認からスタートしました。すると、加入期間は46(昭和21)年1月~64(同39)年7月の222カ月。受給条件を満たすには18カ月足りません。

 ただ、U雄さんは23(大正12)年生まれです。戦時中の年金記録が18カ月分見つかれば、遺族年金がもらえるだろうと見当をつけました。早速、T子さんに電話で次のようにお願いしました。「U雄さんが兵隊に行く前、あるいは終戦までに軍需工場で働いていませんでしたか。夫のA之さんに確認してほしいのです」

 A之さんからの連絡は約10日後。親戚やきょうだいに尋ね、U雄さんは出兵前と帰還後、兵庫県明石市の軍需工場で働いていたとのことでした。恐らく、明石市や神戸市にあった航空機会社の川西機械製作所では―。過去に年金調査をした経験があり、この会社名で調査を進めました。

 3カ月後、42(同17)年6月~45(同20)年8月のU雄さんの厚生年金記録が見つかりました。これにより、S江さんの遺族年金が受給できることになり、約39年分の約900万円をA之さんに受け取っていただきました。

 当事務所にとっても、ぎりぎりの挑戦のような調査でした。諦めずにT子さんが相談してくれたからこそ、思いに応えられる結果になったのです。(年金コンサルタント)

柴田さんの連絡先 〒333―0802埼玉県川口市戸塚東4の25の4、産友社会保険労務士事務所。☎048(296)2075、ファクス048(296)5914

(2022年12月23日朝刊掲載)

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