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那須正幹さん遺作に劇伴曲 広島・安佐南区出身の作曲家 陣内一真さん 反戦の願い込め 来月8日初演

 公開中の人気アニメ映画「すずめの戸締まり」で音楽を担当した作曲家陣内一真さん(42)=広島市安佐南区出身=が、児童文学作家那須正幹さん(2021年7月に79歳で死去)の遺作「ばあちゃんの詩(うた)」をイメージした劇伴曲を手がけた。1月8日、東区民文化センターで開かれるコンサート「ひろしまから生まれる音楽物語」で初演される。(桑島美帆)

 「ばあちゃんの詩」は被爆70年に合わせて那須さんが創作した800字程度の物語で、中学生の「徹」の目線を通し、原爆で犠牲になった兄を思い続ける「ばあちゃん」との交流が描かれる。2人が交わす何げない会話に、家族の温かさや戦争の非道さ、那須さんが抱いていた反戦への思いが凝縮されている。

 陣内さんが作曲したのは、物語を朗読する前に演奏する「Remembrance of the Past(過去の記憶)」と朗読後に演奏する「Someday(いつか)」。チェロとクラリネット、そしてピアノが、ゆったりと心に染み入るようなメロディーを紡ぐ。「チェロの深い音色でばあちゃんの愛、クラリネットは徹、ピアノで全体を包む温かい空気を表現した」と言う。

 陣内さんは安芸府中高を卒業後に米国へ渡り、バークリー音楽大に入学。2002年に卒業後、インディーズバンドやゲームの音楽などを手がけ、現在は米シアトルを拠点に活動している。自身、被爆者の祖母がいる。「18年過ごした広島は原点であり、折々に原爆の爪痕を感じてきた」と振り返る。東区民文化センター前館長の山本真治さん(60)から作曲の依頼を受け、今年1月に完成した。

 初演は、安佐北区出身で桐朋学園大学院大教授のチェリスト銅銀久弥さんと、ピアニスト吉見友貴さんたちが演奏。詩人のアーサー・ビナードさんが物語を朗読し、南区在住のイラストレーター井上朝美さんが描いた絵のスライドも上映する。陣内さんは「この物語と曲に込められた思いが広島から広がってほしい」と願っている。

 午後2時半開演。入場料3千円(前売り2500円)。同センター☎082(264)5551。

(2022年12月24日朝刊掲載)

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