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[ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 傍観者にはならないで ホロコースト記念館館長 吉田明生さん(53)=福山市

  ≪国内初のホロコーストの教育施設であるホロコースト記念館(福山市)で1996年から勤務。各国を訪ねて生還者たちの声を聞き、資料を集めてきた。2021年に館長に就き、全国から訪れる学生たちにホロコーストの悲劇と教訓を伝えている。≫

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 第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコーストでは、約600万人ものユダヤ人の命が奪われた。うち4分の1に当たる150万人が子どもだった。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、訪れた来館者からはウクライナでの悲劇とホロコーストの出来事が重なって見えるとの声が寄せられている。

 ウクライナ人にとってロシア人は同じスラブ系の「兄弟」民族だった。しかし多くの子どもを含む住民が無残にも殺されている。虐殺の映像や写真を見て戦慄(せんりつ)した。人を人とも思わない、人の命を軽んじる姿勢はホロコーストと通じるものがある。今、ロシアによる核兵器使用の可能性が指摘され、侵攻が長期化する中でいつ核のボタンが押されるか分からない状態だ。

 「アンネの日記」作者のアンネ・フランクの親友で、ホロコーストの生還者のハンナ・ホースラルさんが10月、93歳で亡くなった。95年の開館に合わせ来日した際、「原爆もホロコーストも人がつくり出したもの。それを止めるのもまた人なのです」と何度も語りかけた姿が胸に焼き付いている。

 ホロコーストや戦争の経験者が亡くなる中、歴史を学び、思いを継承する重要性が増している。今、ウクライナとロシアにいない世界中の中高生たちも、報道を通じこの時代を経験している。今の感情をしっかり心にとどめ、一人の人間として何ができるか、考えることが重要だ。

 ホロコーストからの学びの一つに、傍観者の存在がある。目の前でユダヤ人が連れ去られても大多数の人が「私には関係ない」と沈黙し、見過ごした。結果的にさらに多くの犠牲者が出た。今回のウクライナ侵攻は、世界の問題だ。決して傍観者にならないでほしい。(聞き手は原未緒)

(2022年12月28日朝刊掲載)

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