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舟入むつみ園 耐震化遅れ 一時受け入れ先にも影響 原爆養護ホーム 入札不調

 原爆養護ホーム「舟入むつみ園」(広島市中区)の耐震工事が大幅に遅れる見通しとなっている。2022年秋に着工し、23年秋に完成する予定だったが、入札が不調だったため。同園と、工事中に入所者の一時受け入れ先となる「倉掛のぞみ園」(安佐北区)は21年4月から新規入所を制限しており、影響が長期化しそうだ。(小林可奈)

 むつみ園は定員100人。鉄筋5階、地下1階で、市と県が費用を負担して、1970年に建設した。広島原爆被爆者援護事業団が運営し、市内に4園ある原爆養護ホームの一つ。被爆者健康手帳を持ち、自宅での養護が困難な被爆者が暮らす。

 17年度の耐震診断で、震度6強から7程度で倒壊などの危険性が高いと判明。市などは入所者にのぞみ園へいったん移ってもらい、1年かけて耐震工事をする計画を立てた。のぞみ園の定員300人のうち、むつみ園分の受け入れ枠を60人に設定。人数調整のため、21年4月から両園で新規入所を止めていた。

 ところが、22年9月の一般競争入札は唯一応札した1社が予定価格を上回り、不調に終わった。市はウクライナ危機などに伴う物価高が影響したとみて、23年に予定価格を引き上げて再入札する方針でいる。

 一方、市はのぞみ園の新規入所を22年10月に再開。むつみ園も年明けに再開する方向だ。ただ定員と受け入れ枠を維持するため、他施設への移動や死亡で空きが出た場合とする。

 22年11月末の入所待機者は、むつみ園が県・市把握分で578人、のぞみ園が市把握分だけで968人に上る。市調査課は「できるだけ早く安心・安全な施設にした上で、より多くの入所者を受け入れられるようにしたい」としている。

(2022年12月27日朝刊掲載)

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