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沖合移設 改善実感なく 岩国爆音 第2次提訴 慰謝料対象外 救済求める

 米軍岩国基地(岩国市)の周辺住民が26日、航空機の飛行差し止めなどを国に求める訴訟を再び起こした。狙いの一つが、基地の滑走路が沖合に移ったのを理由に第1次訴訟で慰謝料の対象から外れた63人を救うことだ。「空母艦載機が移ってきて、さらに騒音がひどくなっている」。司法に改めて判断を求める。(黒川雅弘)

 元会社員の70代男性は転勤で岩国市に移り住み、滑走路から約3キロの住宅街で40年余り暮らす。戦闘機が離陸するたび「ゴォー」と重低音が鳴り響き、読書やパソコンの作業を止めざるを得ない。早朝や夜間に飛ぶこともある。「岩国の日常だが、爆音に慣れることは決してない」

 男性方は、国が住宅防音工事の費用を助成する「うるささ指数(W値)」75の区域にある。かつて近くで暮らしたアパートでは工事をしたが1部屋だけしか防音できず、効果が乏しいと感じた。「税金の無駄遣い」と考え、今の自宅では防音工事をしていない。

 2009年に起こした第1次訴訟では、10年に滑走路が沖合に1キロ移ったのを理由に15年の一審判決から慰謝料を0円とされ、最高裁が21年4月に住民側の上告を退けて確定した。岩国基地では控訴審さなかの18年、厚木基地(神奈川県)から空母艦載機約60機が移り、極東最大級の航空基地となった。

 男性は滑走路の沖合移設で騒音が少なくなると信じていたが、改善した実感はなかった。さらに艦載機が3、4機の編隊で上空を飛ぶようになった。「1次訴訟は飛行を差し止める判断を裁判所が放棄した。さらに飛行回数が増え、国に裏切られた気分だ」と憤る。

 ただ、複雑な思いも抱く。岩国基地の関係者が近くに引っ越してきて、家族ぐるみで付き合っている。「会えばあいさつをするし、話もする。でも、基地がある限り戦闘機は飛び続け、騒音は消えない」。原告団に加わるのに葛藤もあった。

 「被害に対する慰謝料が欲しいわけではない。騒音そのものをなくしてほしい」。声を上げ続けるしかないと信じる。

(2022年12月27日朝刊掲載)

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