×

ニュース

被爆体験伝承者 原爆資料館で1日2回 講話会来場者数が低迷 コロナ禍 外国人減響く

 原爆資料館(広島市中区)で開かれている市の「被爆体験伝承者」による講話会への来場者数が、新型コロナウイルス禍以来の低迷を脱していない。団体に比べて個人、特に入国制限が続いた海外からの入館者の減少が響いているという。関係者は来年に望みをつなぐ。(新山京子)

 被爆体験伝承者は、高齢の被爆者に代わり証言を担う。講話会は主に個人の入館者向けで、伝承者が交代で担当する。東館で1日2回、約1時間。無料だ。

 12月上旬、河野迪子(みちこ)さん(77)=佐伯区=が12歳の時に被爆した故児玉光雄さんの体験を語った。聞き入ったのは名古屋市の大学4年澤柳佳奈さん(21)。「聞くことで展示への理解も深まる」と話す。河野さんも澤柳さんの参加を喜んだ。7月から3回は参加者がゼロだった。「児玉さんの遺志を何とかもっと伝えたい」

 講話会はコロナ禍前の2019年度は1日3回で、うち1回は英語で実施した。20年2月末からの臨時休館に伴い休止になりながらも、約11カ月で計1万9440人が利用した。21年10月に1日2回の日本語講話を再開したが、休館や入館制限もあり21年度は1948人。22年度の利用は現在4千人余となっている。同館は入館者にチラシを配っているが「もっとPRを」との声も伝承者の間にある。

 全体の入館者数は4~11月で75万5858人で、19年同期比の約半分ながら21年度の40万5987人をすでに超えた。修学旅行など団体が盛り返す一方、同館啓発課は「個人の伸びは鈍い」と話す。特に外国人は、52万人を超えた19年度と比べ現状で約1割だ。

 10月に個人旅行者の入国が全面解禁され、英語講話の再開を近く予定するなど明るい材料も。来年広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)で、インバウンド(訪日客)の増加が期待される。伝承者の兼沢清美さん(59)=中区=は「来年こそ共に平和について考える機会を」と願う。

(2022年12月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ