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[こちら編集局です あなたの声から] 今年・来年の漢字 読者が込めた思いは

「戦」に心痛 「耐」える物価高

「明」るく 平「和」な「安」らぎ期待

 ロシアのウクライナ侵攻に心を痛め、長引く新型コロナウイルス禍や物価高に苦しんだ一年。編集局が読者に無料通信アプリLINE(ライン)で「あなたが選ぶ今年の漢字」を尋ねたところ、「戦」「耐」「苦」「乱」など不安に包まれた世相を象徴する1字が並んだ。2023年への期待も漢字で表してもらうと、「明」「和」「安」など戦争やコロナ禍の収束への願いを込める字が挙がった。(新本恭子)

 約200人から寄せられた22年の漢字の1位は、日本漢字能力検定協会(京都市)の発表と同じ「戦」。20人が選んだ。廿日市市の非常勤講師女性(63)は「ロシアの一方的な侵攻に腹が立ち、ウクライナの人がかわいそうでならない」と憤慨。人生で初めて抗議集会に参加し「人生最高額の寄付をした」と打ち明ける。

 岸田文雄首相が日本の安全保障政策の大転換を決めた年でもあった。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記した安保関連3文書改定が閣議決定され、広島市安佐北区の塾経営男性(63)は「日本も戦争へと近づいている気配がする」と懸念する。同じ「戦」ながら日本代表がドイツ、スペインを破ったサッカーワールドカップ(W杯)の余韻をかみしめる声もあった。

 2位の「耐」(8人)や3位の「忍」「苦」(いずれも6人)からは食品やエネルギー価格の上昇、長引く新型コロナ禍への嘆き節が聞こえてくる。「耐」を選んだ東区のパート女性(49)は「外出も外食もせず、光熱費は天井知らず。子どもたちに我慢をさせてしまった」。福山市の会社員女性(52)は「高」を挙げた。単価が安い隣の県の給油所までガソリンを入れに行っているという。

 新型コロナは感染対策と社会活動の両立が模索された。佐伯区の会社員女性(48)が挙げたのは「集」。祭りやイベント、学校行事が徐々に再開され「人が集まって時間と空間を共有することがエネルギーになると実感した」と喜ぶ。

 一方、医療の最前線で感染者に対応する安佐南区の看護師女性(48)は「迷」を挙げ「行動制限のない世間とのギャップが大きくて迷った」。「忍」を挙げた安佐南区の主婦(55)も「行動制限が解除になっても感染したくないので、自由にしている人たちを尻目に、あまり出かけなかった」と振り返る。

 来年の漢字は今年の漢字の暗いムードをかき消すように、「明」(16人)がトップに輝いた。庄原市の公務員男性(56)は「『明』快にスカッとふに落ちる、見通し『明』るく進歩が実感できる年に」と願う。

 2位は各14人が選んだ「和」と「安」。今年、結婚と出産を経験した府中町の主婦(29)は「ウクライナ侵攻もコロナも平『和』的解決の糸口を見つけてほしい。新しく築いた家庭も『和』やかに」とつづった。

 安佐南区の無職男性(62)はえとにちなむウサギをイメージさせる「跳」に決めた。広島東洋カープは新井貴浩新監督が率い、J1サンフレッチェ広島はエディオンスタジアム広島(安佐南区)を本拠地とする最後の年。「ダブルで優勝してもらい、私も跳びはねたい」と期待する。

(2022年12月29日朝刊掲載)

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