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[ヒロシマの空白] 平和祈念館 中国の留学生 遺影を初登録 広島の女子寮で被爆

 広島で被爆した中国大陸からの留学生の遺影が29日、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)に初めて登録される。日本軍が統治した「満州国」(現中国東北部)出身で、広島大の前身の文理科大で学んでいた張秀英さん=当時(26)。神奈川大人文学研究所の客員研究員、周一川さん(67)が登録を申し込んだ。

 張さんは、今の中国・遼寧省出身。1941年に奈良女子高等師範学校(現奈良女子大)へ入学し、卒業した44年に文理科大へ進んだ。45年8月6日、今の中区猫屋町にあった女子寮で被爆したとみられる。満州国からの留学生で、婚約していた文理科大生の男性も被爆死。2人とも遺骨も見つからなかったという。

 周さんは日中の教育交流史を研究。2010年に張さんの奈良女子高師時代の同窓生を取材し、写真を複写していた。祈念館には戦時中に強制連行され、広島で被爆して死亡した中国人4人の名前や遺影が登録されているが、中国からの留学生は初めて。周さんは「原爆の犠牲者に中国からの女子留学生もいたという事実を、広く知ってほしい」と話す。23年1月1日から館内で閲覧できる。

 広島で被爆した中国からの留学生は12人おり、うち6人が原爆死。助かった6人のうち健在は1人だけとみられる。(編集委員・田中美千子)

(2022年12月29日朝刊掲載)

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