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全国の映像祭で特別賞 「黒い雨」被害題材 広経大生がドキュメンタリー 「優れた調査報道」と評価

 原爆投下後に降った「黒い雨」被害を題材にした広島経済大(広島市安佐南区)の学生によるドキュメンタリー作品が、全国の映像祭で審査委員特別賞に選ばれた。県内の被害者が国を訴え、被爆者に認定されるまで密着し、「地域に入り込んだ優れた調査報道」との評価。学生たちは「今も続く原爆被害を考えるきっかけにしてほしい」と願う。(川上裕)

 タイトルは「黒い雨から76年 短命村(たんめいそん)と呼ばれた里から」(37分)。いずれもメディアビジネス学部4年の西野真李花さん(21)、奥原芽衣子さん(21)、梶岡尚大さん(22)が手掛けた。

 2021年2月から半年余り、佐伯区湯来町と安芸太田町に住む「黒い雨」訴訟の原告たちを取材。病気や差別で苦しんできた肉声を伝え、汚染された井戸水などによる内部被曝(ひばく)の可能性を指摘した。湯来町の集落に暮らす高齢の被害者から、戦後に原因不明で亡くなる若者が相次ぎ「短命村じゃと言われた」という証言を引き出し、タイトルに盛り込んだ。

 3人は、所属ゼミの歴代の先輩たちが黒い雨をテーマにした映像制作に取り組んできた姿を見て、自分たちも挑戦しようと決めた。撮影を担当した奥原さんは「原告からの『若い人が関心を持ってくれることがうれしい』という声が励みになった」と振り返る。

 作品は11月、NHKや民放連などの実行委員会が主催し、1980年から続く「『地方の時代』映像祭」の「市民・学生・自治体部門」で、69作品の中から優秀賞4作品の一つに選ばれ、学生制作では初めて審査委員特別賞も受けた。「黒い雨の降雨地域の線引きに疑問をもち、救済されなかった地域に長く入り込んだ」とたたえられた。

 作品は動画投稿サイト「ユーチューブ」で無料公開している。演出・ナレーション担当の西野さんは「同じ苦しみを繰り返してはならないと強く思った。多くの人に黒い雨の問題を知ってもらいたい」と話している。

(2022年12月30日朝刊掲載)

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