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社説・コラム

天風録 『2022年を記憶する』

 聖徳太子は「せいとくたこ」。勉強が苦手な女子高生が一念発起して有名大学を目指す―。実話が映画化された「ビリギャル」の一手が「日本の歴史」の学習漫画を読むことだった。それもあって、この種の本は大ブームに▲あの手この手で大手が競い合う。ビリギャル愛用のシリーズとは別の出版社は10月に平成-令和編を世に出した。驚いたのは3・11から始まるこの巻に7月の元首相銃撃まで入れたこと▲令和の歴史をいち早く子どもに。その意欲は頼もしい。コロナ禍と東京五輪のごたごた、政局の混乱もしっかり描く。報道でおなじみの面々の似顔絵も面白いが、この出版社の前会長も立件された8月以降の五輪汚職はさすがに間に合わなかったか▲まさしく激動だった令和4年、2022年がきょう幕を閉じる。衝撃ニュースの連続で、もはやウクライナ侵攻の始まりなどは昔のよう。記憶どころか歴史の教科書に刻まれる年だろう▲聖徳太子が摂政に就いたのは「コックさん」(593年)。年号語呂合わせは学習指南の伝統技だ。「2022年」の覚え方も将来、さまざまにアイデアが出るかもしれない。とりあえずは正月返上の受験生にエールを送る。

(2022年12月31日朝刊掲載)

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