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連載・特集

ヒロシマの記録2022 7~12月 平和への歩み 一歩ずつ

7月

 5日 家族の被爆体験を聞き取って語り継ぐ広島市の「家族伝承者」の養成研修が始まる▽北大西洋条約機構(NATO)加盟各国がフィンランドとスウェーデンの正式加盟を承認する議定書に署名。両国は軍事的中立政策を取ってきたが、ロシアのウクライナ侵攻を受け安全保障政策を見直す

 13日 広島県などが主催した核軍縮・軍備管理を巡る有識者会議「ひろしまラウンドテーブル」が議長声明をまとめる。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、世界で核抑止を強化する兆しがあると懸念を表明

 14日 バイデン米大統領がイスラエルを訪問し、ラピド首相との会談で「米国はイランの核兵器保有を決して認めない」とする共同宣言に署名

 15日 政府が2023年に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、「G7広島サミット事務局」を外務省内に新設

 17日 沖縄返還が迫る1970年、米原子力潜水艦が日本に寄港する際の放射線モニタリング(監視)の緩和を米国が日本に要求、原潜派遣中断による軍事協力の縮小を示唆し圧力をかけていたことが機密解除された外交文書で分かった

 21日 G7サミットに向け、広島県内の官民組織「広島サミット県民会議」が発足▽ロシアを支援するベラルーシのルスラン・イエシン駐日大使が広島市の平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花。ロシアの核兵器使用示唆に関し「自国の主権と独立を守るために欠かせないのであれば核兵器は必要だ」と主張

 29日 広島市が21年10月に96歳で亡くなった前広島県被団協理事長の坪井直さんの名前を原爆死没者名簿に書き入れる

 30日 韓国原爆被害者対策特別委員会委員長の李鍾根(イジョングン)さんが93歳で死去

 31日 広島原爆の「黒い雨」の被害者救済を巡り、当時母親の胎内にいた人の被爆者健康手帳の交付審査が保留になっていることが判明。国の新たな被爆者認定基準では、母親が死亡した場合の審査方法を想定しておらず、少なくとも40人超の審査を保留

8月

 1日 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が米ニューヨークの国連本部で7年ぶりに開幕。岸田文雄首相は日本の首相として初めて出席し「核兵器のない世界に向け現実的な歩みを一歩ずつ進めなくてはならない」と訴えた

 4日 ロシアのガルージン駐日大使が広島市の平和記念公園で原爆慰霊碑に献花。ウクライナ侵攻を巡り「核兵器を使用する考えは全くない」と述べた▽日本原水協と原水禁国民会議がそれぞれ中心となる二つの原水爆禁止世界大会の広島日程がスタート

 5日 広島市東区出身の世界的な服飾デザイナーで、被爆者の三宅一生さんが84歳で死去

 6日 米軍による広島への原爆投下から77年。広島市は平和記念公園で平和記念式典を営み、松井一実市長が平和宣言で、ロシアのウクライナ侵攻への危機感を伝え「一刻も早く全ての核のボタンを無用のものにしなくてはならない」と訴えた。岸田首相は就任後初めて臨んだ式典で「核兵器のない世界」を目指す決意を表明▽二つの原水爆禁止世界大会がそれぞれ広島日程を締めくくる集会を開き、核兵器禁止条約の重要性を再確認

 9日 米軍による長崎への原爆投下から77年。長崎市は平和公園で長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を営み、田上富久市長は平和宣言でロシアの核兵器使用の危機に触れ「存在する限りは使われる。なくすことが人類の未来を守る唯一の現実的な道だ」と訴えた

 26日 NPT再検討会議がロシアの反対で決裂し、閉幕した。採択できなかった最終文書案では、核兵器廃絶が核兵器の使用や威嚇に対する「絶対的保障」と強調。核兵器保有国が非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせる交渉の必要性や、核兵器禁止条約を巡る事実関係を示していたが、交渉過程で保有国による「先制不使用」宣言の採用を削除するなど核軍縮の内容は大幅に後退

9月

 5日 広島原爆の「黒い雨」訴訟弁護団長だった広島敦隆弁護士が77歳で死去

 8日 「黒い雨」の被害者救済で、広島県と広島市が8月末までに、国が被爆者認定の要件とする11疾病を確認できないとして2件の被爆者健康手帳の交付申請を却下していたことが判明。国が4月に新たな認定基準を導入後、県内で11疾病を理由にした却下は初めて

 21日 岸田文雄首相が国連総会の一般討論演説で「核兵器のない世界」への決意を表明。ウクライナに侵攻したロシアを名指しで批判し、安全保障理事会の改革を訴えた▽ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り国営テレビを通じて演説。「領土保全が脅かされれば国と国民を守るためあらゆる手段を講じる」と述べ、核兵器使用も辞さない姿勢を強調した

 22日 岸田首相が包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を目指し、初の首脳級会合を米ニューヨークで主催。米国や中国などに早期批准を求める共同声明を採択した

 25日 ブリンケン米国務長官がCBSテレビのインタビューで、ロシアが核兵器使用に踏み切った場合、米国として対応策は用意できていると説明。「破滅的な結果になるとロシア政府が知ることが重要だ」と警告した

 27日 韓国国防省傘下の韓国国防研究院は、北朝鮮が1970年代からの約50年間にわたり核開発に11億~16億ドル(約1580億~2300億円)を投入したとの推計結果をまとめた。与党「国民の力」の議員が明らかにした

 30日 ロシアのプーチン大統領がウクライナで制圧した東南部4州の併合を宣言。「運命はロシアと共にある。住民は永遠にロシア人になる」と述べ、4州の親ロ派代表と併合条約に調印した

10月

 2日 米国のオースティン国防長官がCNNテレビの番組で、核兵器使用の可能性を示唆するロシアのプーチン大統領について「彼一人だけが決断する。歯止めをかける機能がない」と危機感を示す

 4日 日本被団協が全国都道府県代表者会議を東京都内のホテルで開催。核拡散防止条約(NPT)再検討会議と核兵器禁止条約の第1回締約国会議を振り返り、日本政府に改めて禁止条約の署名・批准を迫る姿勢を確認▽北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射した。青森県上空を通過し、日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと日本政府が推定。日本上空を通過するのは2017年9月以来7回目

 6日 平和首長会議の加盟都市でウクライナ北部スラブチチ市のユーリー・フォミチェフ市長が中国新聞のインタビューにオンラインで応じ「核の脅威から市民を守るために首長の連携が必要だ」と訴え▽バイデン米大統領は核兵器使用の可能性を示唆するロシアのプーチン大統領の言動を念頭に「このままではキューバ危機以来、初めて核の脅威に直面する」と述べた。世界最終戦争を意味する「アルマゲドン」という言葉も使用▽長崎で被爆した「現役最後の被爆者漫画家」西山進さんが94歳で死去。日本被団協の月刊機関紙に4こま漫画「おり鶴さん」を連載

 7日 林芳正外相が記者会見で、広島市で11月23日に予定していた核兵器のない世界に向けた国際賢人会議を12月に延期すると表明

 12日 広島市出身の被爆者で作家の中山士朗さんが91歳で死去

 19日 平和首長会議の設立40年記念の総会が広島市で開幕。5年ぶりの開催でオンラインを含め21カ国113都市が参加した

 20日 平和首長会議の総会が核兵器廃絶に向けた共同宣言「ヒロシマアピール」を採択し、閉幕。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器使用のリスクが高まる中、各国の加盟都市が連携し、核超大国の為政者たちに政策転換を促す

 23日 ロシア国防省は、ショイグ国防相が英国、フランス、トルコの各国防相と相次ぎ電話会談し、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を使う恐れがあると懸念を示したと発表した

 27日 バイデン米政権が核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」を公表。ロシアのプーチン大統領が核兵器使用をちらつかせ、世界の安全保障環境が厳しさを増す中、核抑止力は「米国の最優先事項」だとした。中国、北朝鮮の脅威にも対処するため、日本や韓国など同盟国への「核の傘」を強化するとした▽ロシアのプーチン大統領は、モスクワでのフォーラムで「われわれが自分から核兵器を使うと言ったことは一度もない」と述べ、核兵器を先制使用しないとの立場を示した

 30日 核兵器廃絶を訴える広島県内の高校生平和大使たちが広島市の平和記念公園でロシアの「核の脅し」に反対する緊急の署名活動をした

11月

 2日 ロシア外務省は米国、英国、フランス、中国に対し、核保有五大国間の軍事的衝突を防ぎ、核戦争を回避するための具体的な行動を示すよう呼びかける声明を発表した

 3日 北朝鮮が弾道ミサイル3発を発射、いずれも日本海に落下した。米韓などによると最初の1発は大陸間弾道ミサイル(ICBM)。異例のペースでミサイルを発射しており、2022年で30回目

 9日 広島県と非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))」が被爆の実態を学び、安全保障の在り方を考える講座「ICANアカデミー」を広島市で始める。20カ国の若者29人が参加

 10日 韓国国防省は北朝鮮への抑止力強化の一環として、韓国軍合同参謀本部内にある核兵器攻撃などに対応するための組織を拡大、「核・WMD(大量破壊兵器)対応本部」を設置する方針を明かす

 14日 米国のバイデン大統領は、中国の習近平国家主席とインドネシア・バリ島で会談。ロシアを念頭に、両首脳はウクライナでの核兵器の使用や核使用の威嚇に反対を表明した

 16日 バリ島で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が「核兵器の使用や、使用の脅しは許されない」と明記した首脳宣言を採択

 18日 北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を発射。北海道渡島大島の西約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定

 22日 ICANは、ベアトリス・フィン事務局長が23年1月末に退任すると発表

 29日 米国防総省が中国の軍事動向に関する年次報告書を発表し、中国が21年に核戦力の増強を加速させ、運用可能な核弾頭は400発を超えたと推定

12月

 1日 広島で被爆した中国大陸からの留学生12人の詳細が判明したと中国新聞が報じる。日本軍が統治した「満州国」(現中国東北部)などからの留学生で6人が原爆死▽広島県被団協(箕牧智之理事長)が初の公式サイトを開設

 2日 米空軍がステルス性が高く核兵器を搭載可能な新型戦略爆撃機B21を初公開

 7日 原爆ドームが世界遺産登録から26年▽ロシアのプーチン大統領は人権関連の評議会で、世界的な核戦争のリスクについて「脅威が増している」と語った

 8日 国連総会本会議が、日本政府が提出した核兵器廃絶決議案を147カ国の賛成で採択。核兵器禁止条約に初めて言及し、核兵器保有五大国では米国、英国、フランスが賛同

 9日 ロシアのプーチン大統領が記者会見で、ロシアの軍事ドクトリンが核を報復にのみ使用できるとする一方、米国は先制攻撃が可能だと主張し「安全保障確保のため、米国案の採用を検討すべきかもしれない」と語る

 10日 国内外の有識者や外交官たちが核兵器廃絶の道筋を探る国際賢人会議の初会合が広島市で開幕。オバマ元米大統領がビデオメッセージを寄せ「次代のため、私たちは核兵器のない世界を追求する責務がある」と訴えた

 11日 国際賢人会議の初会合閉幕。岸田文雄首相は2023年に広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)へ「核兵器のない世界に向けた力強いメッセージを発信できるよう議論を深めたい」と述べた

 12日 被爆2世は放射線の遺伝的影響による健康被害が否定できないのに国が援護を怠ってきたとして、長崎県などの2世と遺族の計28人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁が請求を棄却。同種訴訟は広島地裁でも起こされており初判断となった

 13日 広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長が官邸で岸田首相に面会し、広島サミットで「核兵器廃絶」を議題にするよう要請

 15日 中国新聞社が「まんが 被爆地の新聞社」を販売開始。原爆が落とされて間もない広島で報道を続けた社員を描く

 16日 政府が防衛力強化に向けた新たな「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を閣議決定。反撃能力(敵基地攻撃能力)保有を明記した

 23日 放射線影響研究所(広島市南区)が、25年度内の広島大霞キャンパス(同)への移転完了を目指していることが判明。政府は同日閣議決定した23年度予算案に事業費を計上した

(2022年12月31日朝刊掲載)

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