×

連載・特集

[2023広島サミット] 広島サミットイヤー幕開け 議長国の日本 事前外交が鍵 実務調整役「シェルパ」

 開催まで5カ月を切った広島市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け、1日に議長国となった日本政府は、議題や会議日程についての調整を本格化させる。サミットを成功に導くため、各国の首脳や政府高官たちとの「事前外交」が重要になる。

 議長の岸田文雄首相は1月にさっそく、G7各国への歴訪に出る。ライフワークとする「核兵器のない世界」に向けた道筋や保健医療、気候変動など地球規模の課題についてサミットで議論を深めるため、米国のバイデン大統領たち首脳に協力を要請する見通しだ。

 事前外交を担うのは首相だけではない。実務レベルでの調整は、首相の命を受けた「シェルパ」と呼ばれる個人代表が担う。今回は外務省の小野啓一外務審議官(経済担当)が務め、議題の詳細などについて各国の反応を探りながら、本番でテーマ設定できるかどうかを見極める。

 広島県や市が望む、G7首脳と被爆者との面会や原爆資料館(中区)の見学についても首相は各国と調整する考えを示している。サミットに詳しい名古屋外語大大学院の高瀬淳一教授は「平和発信など広島サミットで期待される成果は、事前外交が円滑に進むかがポイントになる」とみる。

 政府は4月から12月にかけて14の関係閣僚会合を順次開催。核兵器廃絶を巡っては、国内外の有識者や外交官による「国際賢人会議」の第2回会合もサミット前の春に開き、機運を高める。

 サミットの主会場はグランドプリンスホテル広島(南区)、国際メディアセンターは県立総合体育館(中区)となる。本番が近づくと、市民生活への影響が広がる。広島東洋カープは5月上旬から本拠地マツダスタジアム(同)での試合開催を見送る。県内の宿泊施設は会期前後の予約を制限する。県、県警、市などは期間中を含む5月18~22日に県内の高速道や市中心部の一般道の交通総量を通常の5割に抑える目標を設定。マツダは同期間に本社宇品工場(南区)や防府工場(防府市)を休業する。(樋口浩二)

車両ラッピングでおもてなし

路面電車やバス 中高生デザイン 来月から運行

 広島県内13校の中高生たちが、広島サミットをPRする路面電車や路線バスのラッピングデザインを手掛ける。歓迎機運を高めようと、官民でつくる広島サミット県民会議が企画し、2月から県内で運行。世界の注目を集める会議で、広島の若者たちが広島の魅力発信へ一役買う。

 路面電車は6校が広島-宮島間などを走る1台(5両編成)の側面を一つずつ、バスは7校が市内線や広島―竹原線など7社の各1台を担当。観光や平和をテーマに、それぞれ制作を進めている。

 広島みらい創生高(中区)は路面電車の側面をデザインする。文芸部2年の宮越純々奈(すずな)さん(17)と、3年の天野カムイさん(18)が、スポーツが盛んな広島の街の魅力を伝えるイラストを考案。サッカーボールやバスケットボールを描き、スポーツ選手を夢見る広島の子どもが、成長して夢をかなえるイメージを表現する。

 宮越さんは「絵を描くのが大好き。サミットのような世界的な行事に関われるのはめったにないチャンス」。天野さんも「通学で使う電車に自分のイラストが載るなんてうれしい。海外から広島に来る人たちに見てもらいたい」と声を弾ませる。

 県民会議は、サミットの開催PRと同時に、若い世代に関心を高めてもらおうと、各市町教委などを通じてデザイン制作に取り組む学校を募集。抽選で13校を決めた。2月に披露後、5月下旬まで約3カ月運行する予定だ。

 ほかに高校生たちの「ジュニア会議」開催やカウントダウンボード制作も企画。若者が国際感覚やチャレンジ精神を育む機会を増やし、サミットの成果を次代につなぐ取り組みに力を入れる。 (久保友美恵)

みんなで作ろう モザイクアート 参加募集

 小中学生や高校生が気軽に参加できる、広島サミットの歓迎準備があります。広島サミット県民会議が企画し、各国のリーダーへの歓迎の言葉や、平和への願いを発信するモザイクアート作りです。参加してみませんか?

 メッセージを書いた紙などを持ち、笑顔で撮った写真を用意してください。広島の魅力が伝わる物や風景などの写真に、メッセージを書き込んでもいいです。これをスマートフォンやタブレットで送るだけ。誰でも参加でき、たくさん送っても構いません。これまでに約3千枚届きました。

 集まった写真は、小さくしてぎっしり並べ、一つの絵に見えるよう仕立てます。皆さんの写真一枚一枚が、絵の材料になるのです。完成した絵は、サミット関連行事の会場に飾ります。中国新聞の朝刊や子ども向けウェブサイト「ぶんタッチ」でも披露します。

 締め切りは4月2日。詳しい応募方法は「ぶんタッチ」で紹介しています。G7サミットとは何か、子どものために易しく解説するコーナーも設けています。ぜひ、見てください。(奥田美奈子)

(2023年1月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ