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社説・コラム

天風録 『「時の目」』

 新春の青空に誘われ、初詣に広島護国神社を訪れた。連れだって祈り、談笑する家族や仲間でにぎわう。コロナ禍で遠ざかっていた風景に触れ、すがすがしい気分に。そのまま散策に出かけた▲中央公園広場で大型クレーンが群を成し、サッカースタジアムのスタンドらしき骨組みが見えた。1年余り後の開業へまっしぐらのよう。旧市民球場跡地も工事用の囲いに覆われ、常設のイベント広場へと衣替えが急ピッチだ。3月末に再出発する▲平和記念公園そばのおりづるタワーの屋上から眺めてみた。両エリアとも原爆資料館、原爆慰霊碑、原爆ドームを結ぶ「軸線」の延長にあたる。被爆から復興した地に人々が集い行き交う―。平和発信を続ける未来の街を想像した▲と同時に、地をはう「虫の目」と全体を見渡す「鳥の目」を凝らすと、多様性に気付く。川を生かした水の都構想が息づく。江戸の城下町を発展させた広島藩の文化がある。スタジアム建設地で見つかった戦争遺構は軍都の歴史を改めて想起させた▲姿を変える広島都心のまちづくりに思いを寄せ、話し合う場が増えそうな年。主役は人でありたい。過去を見つめ未来を見通す「時の目」も凝らしつつ。

(2023年1月3日朝刊掲載)

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