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首相、米大統領と会談へ 広島サミットに向け調整 核廃絶 共通認識示せるか

 岸田文雄首相は先進7カ国(G7)歴訪の締めくくりに、米国のバイデン大統領と首都ワシントンのホワイトハウスで会談する。地元の被爆地広島市で5月に開くG7首脳会議(サミット)に向け、核兵器廃絶を目指す共通認識を打ち出せるか。G7で共同歩調を取るのに重要な核大国トップとの協議に注目が集まる。(ワシントン発 中川雅晴)

 首相はウクライナに侵攻したロシアの核の威嚇を念頭に、広島サミットを「核兵器のない世界を目指す国際的な機運を再び盛り上げる大きな転換点」と位置付ける。ただ、G7は核兵器と密接な国ばかりだ。米国、英国、フランスは核兵器を持ち、ドイツ、イタリア、カナダは日本と同じく米国の「核の傘」の下にある。広島サミットで実りある成果を上げるには、まずは各国を核廃絶の議論に引き込む必要がある。

 とりわけ日米首脳会談は今回の欧米歴訪で「最も重要」(政府筋)。バイデン氏から核廃絶に向けた言質をどこまで引き出せるかが鍵になる。バイデン氏は「核兵器のない世界」を目指す姿勢で首相と一致する。2016年に現職米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏の政権で副大統領を務めた経験もある。

 5月19~21日のサミット期間中、G7首脳に被爆の実態と被爆者の声に向き合ってもらう調整も課題となる。首相がバイデン氏との会談で、原爆資料館(広島市中区)の視察や被爆者との面会を打診するかが焦点だ。被爆者との面会が実現すれば、核保有国の米英仏の首脳がそろって被爆者と顔を合わせる歴史的サミットとなる。

 首相が「G7議長としての腹合わせ以上の意味を持つ」と重要性を強調するバイデン氏との会談。台湾海峡への軍事的圧力を強める中国や、核・ミサイル開発を加速する北朝鮮を念頭に、抑止力の強化へ日米同盟の深化をアピールしたい考えだ。

 会談では、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を盛り込んだ安全保障3文書改定や、防衛費の大幅な増額を決めたことを伝える見通し。政府は2023年度予算案の防衛費に敵の射程圏外から攻撃できる米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得費を計上している。

(2023年1月13日朝刊掲載)

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