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社説・コラム

天風録 『ロータリーエンジン復活』

 「150年後の国宝候補」を集めた企画展を東京国立博物館で見た。公募で寄せられたお宝の中から20点の特別賞を選んでいる。その一つがマツダの「誇り」だった▲世界で唯一、実用化に成功したロータリーエンジン(RE)と搭載1号車のコスモスポーツである。社運を懸けた「夢のエンジン」開発は、苦難の連続だった。その物語は、原爆で焼け野原となった広島の復興とも重なる、と応募者の言葉にあった▲小さい割にパワーの出るREだが、燃費の悪さという壁は越えられず、生産中止の憂き目に遭う。しかし今回、不死鳥のようによみがえる。電気自動車の発電機として、11年ぶりに市販車に搭載されるという▲モーターで走り、充電が可能なハイブリッド車の新モデルが次の活躍の場だ。走行距離を倍以上に延ばすとの期待を背負い、業界の潮流、電動化に追い付く。そんな命運が今回託された▲日本の自動車メーカーとしての情熱と気骨さを感じる―。企画展の選考委員を務めた漫画家ヤマザキマリさんは評した。REを搭載する車種は女性が2代にわたって開発責任者を担った。しなやかさも兼ね備え、今度はいつ、スポーツカーで復活するだろうか。

(2023年1月15日朝刊掲載)

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