×

ニュース

那須正幹さん遺作 情感豊か 広島で「音楽物語」 反戦・反核の思い伝える

 児童文学作家那須正幹さん(2021年に79歳で死去)の遺作「ばあちゃんの詩(うた)」が、観客の心に響いた。8日、広島市東区民文化センターで開かれた催し「ひろしまから生まれる音楽物語」。音楽や映像を組み合わせた朗読で、生涯をかけ反戦、反核を訴えた那須さんの思いを伝えた。

 遺作は、おばあちゃんと中学生の孫のありふれた会話を通し、原爆で最愛の家族を奪われた苦しみや日常のいとおしさを描く。会場では、詩人のアーサー・ビナードさん(55)が那須さんの思いに寄り添うように、情感を込めて朗読した。

 その前奏と後奏は、人気アニメ映画「すずめの戸締まり」の音楽を担当した安佐南区出身の作曲家陣内一真さん(43)が創作した。ピアニストの吉見友貴さんたちが静かで優しいメロディーを奏でると、会場の約200人が一気に物語の世界へ引き込まれた。ステージのスクリーンには物語をイメージした絵が投映された。

 会場を訪れた陣内さんは「温かい雰囲気に包まれながらヒロシマの歴史を伝える一つの作品になっていると感じた」と語り、「これからもいろいろな形で編曲し、広めていきたい」と力を込めた。人気アニメ「ちびまる子ちゃん」の音楽を手がける西区出身の作曲家中村暢之さん(67)が、自身の音楽を指揮する演奏もあった。

 西区出身の那須さんは3歳の時に被爆。「ズッコケ三人組」シリーズで知られる。「ばあちゃんの詩」は、15年の被爆70年に合わせ執筆し、未発表のままになっていた。催しは同センターが主催した。 (桑島美帆)

(2023年1月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ