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岡本さん遺志 蔵書2000冊沖縄へ 広経大の元教え子 那覇で贈呈式

 沖縄と広島の戦争遺構を学生と巡るフィールドワークを続け、先月20日に70歳で亡くなった広島経済大名誉教授、岡本貞雄さんの蔵書約2千冊が生前に縁のあった沖縄県立第一中(現首里高、那覇市)の同窓会に寄贈される。恩師の遺志を受け、元教え子ら5人が14日に広島から現地入り。15日、同窓会事務局が入る「養秀会館」での贈呈式に臨む。

 岡本さんは昨年春、がんを告知され余命を悟った。「実家の戦争関係の本棚とそのまわりにある本は全て養秀会館に送ってください。費用は家内に言ってあります」。亡くなる直前、こう記したメモを元教え子に託した。同窓会側にも「若い人たちの勉強に役立てて」と打診していた。

 発送作業を進めたのは、同大卒業生で岡本さんのゼミ生だった会社社長の西嶋広樹さん(42)=東広島市=たち。昨年末に同市内の岡本さん宅を訪れ、段ボール約30箱に分けて事前に送った。贈呈式後、会館に「岡本貞雄資料文庫(仮)」が設置される予定という。

 岡本さんは2007年から毎年、「歩く速さで命を見つめよう」と50キロを学生と歩いて沖縄戦の遺構を巡り、戦争体験者からの聞き取りを証言集にまとめた。多くの生徒が犠牲になったことを伝える養秀会館の資料室も訪れ「鉄血勤皇隊(てっけつきんのうたい)」として戦闘の前線に立たされた生徒の慰霊碑に手を合わせた。

 また、沖縄戦で亡くなった24万人余の名を刻む「平和の礎(いしじ)」(糸満市)から戦艦大和などの乗組員の多くが漏れていることを突き止め、広島県から沖縄県への刻銘申請を促す取り組みを闘病中も続けた。

 西嶋さんは「岡本先生の最後の願いを引き継ぎたかった」、資料室の解説員、山田親信さん(71)は「証言を記録に残し、県内外の若者に沖縄戦を学ぶ機会を与えた岡本さんの思いを受け止めていく」と話している。(湯浅梨奈)

(2023年1月14日朝刊掲載)

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