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社説・コラム

著者に聞く 「たるーの島唄まじめな研究」 関洋さん 琉球の歴史と心を映す文化

 三線(さんしん)の魅力にとりつかれた広島在住の著者が、ウチナーグチ(沖縄の言葉)で書かれた民謡「島唄」の歌詞を読み解いた。本書に約200曲を収める。沖縄本島や宮古島、八重山諸島に伝わる島唄の神髄を「琉球の歴史とともにあり、人々の心を表す優れた文化の一つ」と語る。

 八重山民謡の「くいぬぱな節」が基になった「恋(くい)ぬ花」や、自身が継承に力を入れている「今帰仁(なちじん)ミャークニー」などを収録。1曲ずつ歌詞に読み方と訳を併記し、「うまんちゅ=全ての人々」「たちむどぅら=帰ろう」など、主な言葉に注釈も付けた。

 下敷きになっているのは2005年に開設した同名のブログだ。CDや文献、フィールドワークを通じて曲を発掘。これまで約500曲を紹介し、総アクセス数は447万回を超える。日系人が暮らす南米からも閲覧されているという。

 出版を思い立ったのは2年ほど前。島唄の担い手が減る中、「沖縄民謡を次世代に引き継ごう」と仲間8人と製作委員会を結成し、クラウドファンディング(CF)で資金を募ると、全国から約450万円が集まった。初心者でも分かりやすい本にしようとコラムや漫画も織り交ぜ、島唄の魅力を掘り下げた。

 沖縄出身者が多く暮らす宮崎市内で生まれ育ち、幼い頃から琉球文化の「温かい雰囲気」に親しんだ。1978年、広島大へ。卒業後も会社勤めで広島にとどまり、東区にあった沖縄料理店「琉平」に入り浸るうちに三線と出合った。たるーは、沖縄の歌劇の主人公に由来する自身のニックネームだ。「沖縄の人々が生活の中から紡いだ音楽を、素朴な三線の音色で奏でることに引き込まれた」

 本書では、古来の日本語と沖縄の言葉との深い関わりについても一説を付す。「沖縄で米軍基地を目にするたび、差別を感じる。この本から私たちと沖縄は、きょうだいのような関係であることを知ってもらえたら」と願う。 (桑島美帆) (ゆがふ芸能企画・3520円)

せき・ひろし
 1959年宮崎市生まれ。広島大卒。2000年「広島エイサー琉風会」設立。中国新聞文化センターなどで三線の講師を務める。広島沖縄県人会理事。

(2023年1月22日朝刊掲載)

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