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被爆体験伝承へ改善を 広島市に有志ら 研修継続策要望へ

 広島市の養成研修を修了し、特定の被爆体験証言者に代わって語る活動をしている「被爆体験伝承者」と研修中の有志が20日、市内で会合を開き、証言者が死去した場合などは研修を打ち切るとする原則を改めるよう市に求めることを決めた。被爆者の高齢化に伴い、研修を途中で断念するケースが相次ぐ現状を受けての要望だ。

 エソール広島(中区)に13人が集まった。伝承者の藤川晴美さん(68)=安佐北区=は「研修生は『私に代わり伝えて』という証言者の願いを引き受けている。生前の手記や資料、他の伝承者からの支援があれば継続は可能」と強調した。

 参加者は「研修継続と活動開始の支援策」に加え、証言者をサポートする体制の確立、被爆体験記などを活用した新たな継承の方策、の3点を要望すると確認した。賛同署名をすでに集め、約300人分に達したことも報告された。

 伝承者は、高齢の証言者から体験を聞いて原稿にまとめ、修学旅行生たちに伝える担い手。研修を終えると広島平和文化センター(中区)の委嘱を受け、原爆資料館などで活動する。現在の登録は164人で、研修中は233人に上る。

 一方、市は証言者本人による完成原稿の確認を必要としており、被爆者の死去や体調不良は研修打ち切りに直結する。昨年8月に「被爆体験伝承を未来につなぐ市民の会」を結成し、課題を議論してきた藤川さんは「誰も志半ばで断念したくないはず。伝承の在り方を共に考えたい」と話した。(新山京子)

(2023年1月21日朝刊掲載)

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