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野球で生きていく被爆の少年 「ラジオの力信じて」名将描く 大賞の中国放送作品

 2022年度の文化庁芸術祭賞で、中国放送のラジオ番組「生涯野球監督 迫田穆成(よしあき)~終わりなき情熱」がラジオ部門の大賞を受賞した。高校野球の名指導者として知られる83歳の人生を追ったドキュメンタリー。脚本と編集を担ったラジオ制作部長の増井威司(たけし)さん(58)は「ラジオの力を信じ、情熱を注いで20年。信じられないくらいうれしい」と喜ぶ。

 番組は昨年11月27日に放送。6歳で被爆した迫田さんが、やがて広島商と如水館の両校を春夏計14回の甲子園出場に導き、現在は竹原を指導するまでの半生をたどった。増井さんは「被爆により傷ついた少年が野球で前を向こうとする。そんな姿を監督自身の率直な言葉を交えて紡ごうと思った」と振り返る。戦後、高校球児の活躍に広島の人々が歓喜する姿も、当時のニュース音声などを生かして再現した。

 増井さんは15年度にラジオ部門優秀賞を受けた「赤ヘル1975」でもプロデューサーを務めた。作家重松清の同名小説を原作とするドラマが、広島東洋カープ初優勝に夢を託した市民たちの熱気を伝えた。今回の中国放送のラジオ部門大賞受賞は00年度の「ヒロシマの黒い十字架」以来で、東京、大阪などから参加した13番組から選ばれた。

 増井さんは「映像のないラジオは、想像力を最大限に生かせる。広島にしかない音をこれからも残し続けたい」と誓う。「生涯野球監督」はスマートフォン向けアプリ「IRAW(いらう)」で2月15~28日に配信する。(木原由維)

(2023年1月24日朝刊掲載)

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