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被爆死少年の悲劇を絵本に 来月上旬出版

 建物疎開作業中に被爆死した実在の少年と家族を描いた絵本「8月6日、モリオの見た空」が2月上旬、出版される。広島県立広島第一中学校(現国泰寺高)1年だった三重野杜夫(みえの・もりお)君がモデル。12歳の命や夢を奪った原爆の悲惨さを訴えかけている。

 絵本は、あの朝、杜夫君が「行って参ります」と出かける場面で始まる。爆心地から約900メートルの学校(現広島市中区)の近くで建物疎開中に被爆。父母や姉は、消息を求めて来る日も来る日も被爆直後の街を捜し歩いた。水をほしがる姿を見た人はいたが、杜夫君はとうとう見つけられなかった。「人生これからという若い生命までを奪ってしまう戦争が二度と起きませんように」との遺族の思いで締めくくっている。

 ノンフィクション作家の井上こみちさん(74)=千葉県=が、杜夫君の姉で旧知の茶本裕里さん(84)=東京都=に取材。母親が残した被爆直後の日記からも発想を得て書いた。絵は、画家すがわらけいこさんが担当した。

 弟を捜して入市被爆した茶本さんは「世界には今なお、あちこちに核兵器を持つ国がある。杜夫たちがどうやって死んだのか、原爆の悲劇を知ってもらい、戒めとしてほしい」と話している。

 AB判、32ページ。戦争について考えてもらう学研教育出版(東京)の「せんそうってなんだったの?」シリーズの一巻。小学校の低学年から中学年向け。税抜き1500円。(増田咲子)

(2014年1月27日朝刊掲載)

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