×

ニュース

米軍人 被害者に謝罪 岩国基地所属 12月に車盗み事故

 岩国市内で昨年12月に乗用車を盗み、事故を起こして壊したとされる米軍岩国基地(岩国市)の海兵隊員の男が26日、市内で車の所有者の男性(38)に謝罪した。被害者と基地側は補償に向けて協議を始めた。

 海兵隊員は複数の基地関係者と共に男性とその父親(65)と面会した。隊員は「このたびはこのようなことをして申し訳ありません。反省しています」という内容を英語で読み上げ、弁償する意思を示したという。

 被害者側は事件を起こした動機や経緯、発生から2カ月近くたって謝罪に訪れた理由について説明を求めた。基地側は「捜査中」などとして回答しなかったという。今後、両者で損害賠償の手続きを進めることを確認した。

 被害者側は事件発生当初から隊員との面会を基地に求めていた。面会は2時間に及んだ。

 岩国市などによると、海兵隊員は昨年12月3日朝、男性の父親が経営する自動車販売店から男性の車(540万円相当)を盗み、市内の交差点で追突事故を起こしたとされる。隊員はそのまま基地に戻り、岩国署が任意で事情を聴いている。(有岡英俊)

弁償・処分 進展見えず憤り 被害の男性

 米軍岩国基地の海兵隊員の男が車を盗み事故を起こしたとされる事件は、昨年12月3日の発生から2カ月近くになる。損害賠償や捜査に進展が見えず、車を盗まれた男性は米側の対応に憤り、強制捜査の障壁になっていると指摘される日米地位協定に疑問を深めている。

 「車の弁償も犯罪への処分も、なぜこんなに時間がかかるのか」。男性は26日に海兵隊員と面会後、語気を強めた。隊員は準備した紙を読み上げて謝罪しただけ。男性が求める事件の動機や経緯の説明は基地側からなかった。

 車が盗まれた事務所の防犯カメラには、男が車の鍵を取るためドアを蹴破った様子が写っていた。事件後、男性は基地側と電話で数回やりとりし、事故や盗難による損害賠償を求めても明確な説明はなかった。

 男性は「悪いことをしたら謝る。人の物を壊したら弁償する。当たり前のことを求めているだけだ。うちの小さな子どもも、なぜ謝らないのかと不思議に思っていた」と唇をかむ。遅々として進まない補償の手続きの相談窓口も求める。

 公務中でない米兵の犯罪は、身柄が基地側にある場合、日本側が起訴するまで引き渡さなくてもよいと日米地位協定は定める。男性は、悪質な犯行が疑われるのに逮捕されないことにも納得がいかない。「今まで協定に関心がなかった。加害者が守られ、被害者が守られない。おかしいところだらけだ」

 男性と家族は被害の弁済や厳罰化を訴え、地位協定の改定を求める署名活動を市民団体としている。インターネットでの署名は26日現在で900人以上集まった。「今は基地の関係者を見かけただけで腹が立ってしょうがない。基地と共存する岩国でこんな思いを誰にもしてほしくない」と望む。(有岡英俊)

(2023年1月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ