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連載・特集

[広島サミットに寄せて] 飢餓解決 連帯の場に 国連WFP日本事務所代表 焼家直絵さん

 国連機関の世界食糧計画(WFP)で日本事務所代表を務める広島市西区出身の焼家(やきや)直絵さん(49)は、10代の頃から平和貢献について自問し、世界の飢餓地域に食料を届ける国際支援の現場へ飛び込んだ。地元での先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向け「飢餓の解決は平和の礎。日本政府は、世界が連帯して飢餓に苦しむ人々への支援と行動を強める道筋を築いてほしい」と語る。(聞き手は山本洋子)

 世界の飢餓問題は今、未曽有の状態だ。気候変動や紛争、食料価格の高騰、新型コロナウイルスで加速度的に悪化していたところに、ロシアのウクライナ侵攻が起きた。深刻な飢餓に3億4900万人が苦しんでいる。コロナ禍の前から2億人増え、過去最悪の水準だ。

 最も深刻な「飢饉(ききん)」にほぼ近い人の数は5年前の約10倍。今年は肥料価格の高騰などで農作物の収穫が激減するとの見方があり、非常に懸念している。

  ≪WFPは2020年、食料支援による平和構築への貢献でノーベル平和賞を受賞。自らも、エボラ出血熱が流行したシエラレオネや紛争地の緊急支援、貧困地域での学校給食の仕組み作りに取り組み、飢餓のない世界を目指してきた。≫
 飢餓人口の約6割は紛争地に集中する。紛争さなかに支援したスリランカでは、飢餓を機に民族間の力関係が崩れて対立構造が深まり、いかに食料支援が地域の安定に重要かを肌身で知った。平和と飢餓は密接につながっている。

 日本政府は平和への一歩として、飢餓に苦しむ人たちへの支援と根本的な解決に向けた行動を世界が連帯して取るための合意を広島の地で導いてほしい。財政的にも政治的にも、国連や市民運動の後押しになる。

  ≪ただ、ウクライナ侵攻を受けたエネルギーや食料価格の高騰は、各国の世論を内向きにさせている。≫
 自国のエネルギー問題などへの対応はもちろん重要だ。同時に、地球規模の問題は世界が連帯しなければ解決できない。飢餓は対岸の火事でなく、巡って私たちの生活に影響する。例えば、飢えや紛争で農産物の生産者が減れば、供給量は落ちる。自国優先か、国際支援かの二者択一ではない。

  ≪武力による国際支援をしない日本は、飢餓などの地球規模の問題で、多様な国・地域の信頼を得ながら貢献するのが重要とみる。≫
 核兵器廃絶も、幅広い国や地域の協力が欠かせない。国際支援は、持つ者が持たざる者に与える枠組みではもうない。互いに与え合い、地球規模の問題をともに解決するための連帯と考えたい。広島サミットは、日本がリーダーシップを示す、またとない機会になる。

やきや・なおえ
 1973年生まれ。広島女学院中・高、国際基督教大教養学部を卒業後、オーストラリア国立大大学院で国際関係論の修士取得。イラク、コソボなどで支援活動後、2001年にWFPローマ本部渉外担当官に就いた。シエラレオネ、ミャンマー各事務所副代表などを経て、17年6月から現職。

(2023年1月31日朝刊掲載)

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