米海兵隊員を書類送検 岩国署 車盗み事故の疑い
23年1月31日
岩国市内で昨年12月、車を盗んで事故を起こしたとして、岩国署は30日、米軍岩国基地(岩国市)の海兵隊員の男(20)を建造物侵入と窃盗、自動車運転処罰法違反(過失傷害)、道交法違反(酒気帯び運転、事故不申告)の疑いで書類送検した。検察に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。
書類送検容疑は、昨年12月3日午前7時15分ごろ、岩国市内の自動車販売店に侵入し乗用車(530万相当)の鍵を持ち出して車を盗んだ疑い。さらに酒を飲んで運転し、基地近くの同市旭町の交差点で停車中の軽乗用車に追突して30代女性と50代女性の首などに軽傷を負わせ、警察に届けずに逃げた疑い。同署によると「車を盗んだ」などと供述しているという。
同署は防犯カメラの映像などから男を特定した。「逃走や証拠隠滅の恐れがない」として逮捕せず、任意で事情を聴いていた。
岩国基地報道部は「日本の法的手続きの後、適切な措置を検討する。岩国の人にとって大きな関心事であり、日本側が正式に起訴した後、可能な範囲で情報を公表する」としている。
米軍岩国基地の海兵隊員の男が岩国市内で車を盗んで事故を起こしたとされる事件は、発生から2カ月近くがたって岩国署が男を書類送検した。被害者の男性や支援者は、時間がかかった上に強制捜査に踏み切らなかった警察の対応に疑問の声を上げた。
建造物侵入、窃盗、自動車運転処罰法違反の書類送検容疑に酒気帯び運転も明らかになった。「酒を飲んで運転までしている。たくさんの罪が疑われ、なぜ逮捕されないのか。犯人が分かっていたのに時間もかかり過ぎだ」。車を盗まれた男性(38)は首をかしげた。
26日に初めて面会した男は、英語で書いた反省文を読み上げただけだった。「事件への心証を良くするため、謝罪の事実づくりに付き合わされたようなものだ」と語気を強めた。
岩国市内では2010年9月、基地の軍属女性が男性を車ではね死亡させた。女性が公務中だったとして米側は日米地位協定に基づき裁判権が米軍にあると主張し、検察は不起訴処分にした。19年6月にも公務外の海兵隊員の男が盗んだ車で飲酒運転をして事故を起こしたが、県警は「逃走や証拠隠滅の恐れがない」として強制捜査をせず、書類送検した。
今回の被害者と共に地位協定の改定や厳罰化を求める署名活動をしている市民団体「愛宕山を守る会」の代表岡村寛さん(79)は「飲酒で重大事故の恐れもあった。罪を犯した基地の人間の優遇が、いつまで続くのか」と憤る。
在日米軍の犯罪に詳しい大阪大の藤目ゆき教授は「被害者を巡る状況が終戦直後と変わっていないのが残念だ。裁判権の有無にかかわらず、捜査当局や米軍側を動かすため、地位協定について市民が理解や関心を高める必要がある」と指摘する。(有岡英俊)
(2023年1月31日朝刊掲載)
書類送検容疑は、昨年12月3日午前7時15分ごろ、岩国市内の自動車販売店に侵入し乗用車(530万相当)の鍵を持ち出して車を盗んだ疑い。さらに酒を飲んで運転し、基地近くの同市旭町の交差点で停車中の軽乗用車に追突して30代女性と50代女性の首などに軽傷を負わせ、警察に届けずに逃げた疑い。同署によると「車を盗んだ」などと供述しているという。
同署は防犯カメラの映像などから男を特定した。「逃走や証拠隠滅の恐れがない」として逮捕せず、任意で事情を聴いていた。
岩国基地報道部は「日本の法的手続きの後、適切な措置を検討する。岩国の人にとって大きな関心事であり、日本側が正式に起訴した後、可能な範囲で情報を公表する」としている。
被害者「時間かかり過ぎ」 強制捜査せぬ警察に疑問
米軍岩国基地の海兵隊員の男が岩国市内で車を盗んで事故を起こしたとされる事件は、発生から2カ月近くがたって岩国署が男を書類送検した。被害者の男性や支援者は、時間がかかった上に強制捜査に踏み切らなかった警察の対応に疑問の声を上げた。
建造物侵入、窃盗、自動車運転処罰法違反の書類送検容疑に酒気帯び運転も明らかになった。「酒を飲んで運転までしている。たくさんの罪が疑われ、なぜ逮捕されないのか。犯人が分かっていたのに時間もかかり過ぎだ」。車を盗まれた男性(38)は首をかしげた。
26日に初めて面会した男は、英語で書いた反省文を読み上げただけだった。「事件への心証を良くするため、謝罪の事実づくりに付き合わされたようなものだ」と語気を強めた。
岩国市内では2010年9月、基地の軍属女性が男性を車ではね死亡させた。女性が公務中だったとして米側は日米地位協定に基づき裁判権が米軍にあると主張し、検察は不起訴処分にした。19年6月にも公務外の海兵隊員の男が盗んだ車で飲酒運転をして事故を起こしたが、県警は「逃走や証拠隠滅の恐れがない」として強制捜査をせず、書類送検した。
今回の被害者と共に地位協定の改定や厳罰化を求める署名活動をしている市民団体「愛宕山を守る会」の代表岡村寛さん(79)は「飲酒で重大事故の恐れもあった。罪を犯した基地の人間の優遇が、いつまで続くのか」と憤る。
在日米軍の犯罪に詳しい大阪大の藤目ゆき教授は「被害者を巡る状況が終戦直後と変わっていないのが残念だ。裁判権の有無にかかわらず、捜査当局や米軍側を動かすため、地位協定について市民が理解や関心を高める必要がある」と指摘する。(有岡英俊)
(2023年1月31日朝刊掲載)