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社説・コラム

[ザ☆定番!] 鶴亀もなか(御菓子所高木) 平和への思い練り込む

 もなかの皮に付けられた鶴と亀をあしらったマークが、ひときわ目を引く。「鶴は千年、亀は万年」。長寿や慶事を連想する菓子には、御菓子所高木(広島市西区)の開発者の平和への思いも込められている。

 戦前は、現在の十日市本店(中区)がある場所でぜんざいなどを出す和風喫茶店を営んでいた。1945年8月6日の原爆で店は全壊。創業者の高木松次郎さんも犠牲になった。おいの神谷明雄さん(10~95年)が和菓子店として再出発する際、復興に向けた広島の人たちを元気づけたいと自ら考えたのが鶴亀マークだ。

 鶴亀もなかは52~55年ごろに発売した。食糧難の時代だったが甘味料は使わず、なんとか砂糖を手に入れて商品を作り続けた。加藤圭祐取締役企画室長は「原材料があって、平和でなければお菓子は楽しめない。復興を喜ぶ気持ちと平和への思いが込められたお菓子だ」と話す。

 皮は広島県産のもち米、粒あんは岡山県産の小豆を使う。くぼみを入れて割りやすくするなどの改良はしたが、小豆と砂糖で作るあんの配合などは変えていない。加藤取締役は「味や開発に込めた思いも含めて、お客さんが鶴亀もなかの歴史の重みを感じてくれている。ありのままの形で残していきたい」と力を込める。(加田智之)

 ≪メモ≫定番は、粒あんと抹茶あん。季節限定として、春の桜あん、秋の栗あん、酒かすを入れた冬の酒あんがある。鶴亀マークは、鶴の字の「へん」と「つくり」の間に亀の字を入れて図案化。会社のトレードマークとして手提げ袋などでも使用している。1個173円。

(2023年2月2日朝刊掲載)

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