『生きて』 ゼネラル興産会長 山下泉さん(1936年~) <8> 収益計算書
23年2月2日
銀行時代の知識生かす
広島市中心部の商業ビルをうまく経営するにはどうすればよいか。大都市の商業ビルを視察した。テナント誘致には、立地がどのような業種向けで、どれくらいの規模の店が入る面積なのか、賃貸条件はどう設定すればよいかなどを考慮しなければならないと気付いた。特に繁盛店を見て、客が店内を回遊する動線が重要になると痛感させられた。
≪1980年ごろ、ビルの収益計算を基にした提案を確立。取扱件数が飛躍的に増える≫
買い物客の動線も考え、テナントにとって魅力的なビルにするため、ビルの建設に企画段階から参加するようにした。立地を調べ、土地価格、建築費、設計費、テナント賃料、銀行からの借入金額と返済計画など、ビルの構想段階から完成後30年間の経営をまとめた企画書を作るようにした。ビル1棟で厚さ6センチのファイル数冊の資料になる。
法律や税制、土地や建築、賃貸価格の相場、金融機関の考え方も分かっていなければ作れない。ビルだけの経営ではなく、そのビルを建てようとする企業の経営全体を考えて提案するようにした。するとうまくいくようになり、そのビルを見た他のビル所有者も相談に来るようになった。現在までに手がけたビルは広島市を中心に400棟を超えている。
≪本通り商店街(中区)の店主からビル建て替えやテナント誘致の相談を受ける≫
本通りは銀行時代に担当し、多くの商店主と付き合いがあった。不動産活用には当時から大きな問題があった。戦後の土地区画整理事業により、土地が戦前の7割に縮小されていた。間口1に対し、奥行きは5程度の細長い土地になった。買い物客が店の奥まで入らず、2階へ上がる階段も客の動線を考えた場所には配置できなかった。
新ビルに人気の物販店を誘致できるようにするため、複数の土地をまとめて共同ビルにし、1フロアの面積を広くする案を思い付いた。本通りには所有割合を定めて複数人で共有するようになっている土地が多く、金融機関に担保として提供する際に手続きが複雑だった。銀行での経験も生かして、建て替え資金の借り入れを手伝った。
(2023年2月2日朝刊掲載)