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平和活動支える仏法 真宗本願寺派門徒の広島県被団協理事長・箕牧さん 心安まる寺の時間

親鸞聖人に学び前進

 広島県被団協理事長の箕牧(みまき)智之さん(80)=北広島町=は、浄土真宗本願寺派の熱心な門徒でもある。昨年、同派備後教区の集会に初めて招かれ、僧侶と門徒計約250人を前に講演。「心が安らぐ」という恩徳讃も歌った。原爆被害を世界に発信し続ける日々で、寺での時間が心の支えになっているのだという。その歩みを語ってもらった。(山田祐)

【東京都に生まれ、1945年3月、3歳になる直前に東京大空襲に遭った。5月に父の実家に近い現在の広島市安佐北区に疎開し、8月6日を迎える。倉敷市であった備後教区の平和のつどいで当時の記憶を語った】

 8月6日午前8時15分、私は家の前で遊んでいました。空がピカッと光ったんですが、雷だろうかと思っていました。午後3時ごろになって、近くの道路を被爆した人たちがぞろぞろと歩いてきたことで、広島で大変なことが起きたのだと分かりました。

 父は広島駅で勤務していました。翌日から母に連れられて広島駅近くに父を捜しに通い、入市被爆しました。幸い父は無事でした。

【2005年に旧豊平町の原爆被害者の会会長に就いたのを機に、核兵器廃絶に向けた運動に加わる。21年からは故坪井直さんの後を継いで県被団協理事長に就く】

 3歳で被爆した私は県内各地の団体役員の中で若い方です。県被団協の役員にも就き、広島市内に毎日のように通う時期もありましたし、海外への訪問団にも加わるようになりました。会社員時代よりも忙しくなったと思えるほどです。

 被爆者の援護施策や核兵器禁止条約の批准などを巡り、行政機関とやり合うこともある日々の中で支えとなってくれたのはいつも、浄土真宗本願寺派明覚寺で過ごす時間でした。本堂の厳かな雰囲気の中、阿弥陀如来像の前で2時間ほど過ごせば、凝り固まった心が解きほぐされるんです。

 各地の被爆者団体の代表が集まって会議する場では、かつては活動方針を決めるのに言い合いになることも多くありました。被爆者同士、核兵器を世界からなくしたいという思いは一緒なのに、なぜぶつかるのか―。悩むこともありました。

 そんなとき導いてくれたのは、法話で学んだ親鸞(しんらん)聖人の歩みでした。今では多くの人の支えとなっている教えを残された聖人ですが、若き日の比叡山での修行では、滅することのできない煩悩に悩み、ずいぶん苦労されたといいます。人間くささを感じる逸話です。自分たちも悩むことがあっても、省みながら前進していかなければ。そう思えました。

【被爆者の高齢化が進む中、平和のために声を上げ続けている。ロシアの侵攻を受け続けているウクライナの人々に思いをはせる】

 防衛費の増額が話題になるなど、政府がおかしな方向に進んでいかないか心配しています。お釈迦(しゃか)様の「争ってはいけない」という教えは、私たちにとって絶対に譲れないものです。必要に応じて抗議活動をします。

 今は明覚寺の門徒総代長も任されています。正信偈(しょうしんげ)の一節にあるように、私たちは阿弥陀如来の慈悲に抱かれて安らかに過ごせている。寺に行くたびにそれを実感します。

 でもウクライナの国民は、今日は命があっても明日はないかもしれない、という状況が続きます。過酷な日々を送る人々に思いを寄せて、平和の実現と核兵器廃絶に向けて声を上げ続けていきたいと思います。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、催しが中止になる場合があります。事前に主催者や会場などにお確かめください。

(2023年2月6日朝刊掲載)

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