×

ニュース

被爆2世援護 請求棄却 広島地裁 国の違憲性認めず

 国が被爆2世への援護措置を怠っているのは違憲として、広島への原爆投下で親が被爆した広島、山口県などの2世28人が国に損害賠償を求めた訴訟で、広島地裁は7日、被爆者と同等の措置を講じていない国の対応を「違憲とは認められない」とし、請求を棄却した。(堅次亮平)

 同種訴訟で初の司法判断となった昨年12月の長崎地裁判決も違憲性を否定した上で請求を棄却しており、被爆2世の敗訴が続いた。原告側は「国の対応の問題に言及していない」と判決を批判し、控訴する方針を示した。

 争点となった放射線の遺伝的影響による健康被害について、森実将人裁判長は判決理由で「可能性が明確に否定されているとはいえないものの、有力な見解として認識されていない」と指摘。被爆者援護法で定義された被爆者と比べ「科学的な知見の精度は質的に大きく異なる」とし、被爆者と同等の措置を講じないことが憲法違反にはつながらないと結論付けた。

 被爆2世は2017年2月、1人当たり10万円の慰謝料を求めて提訴。親の被爆の影響による発病の不安など精神的苦痛を受けていると主張し、法的な救済措置を求めることは憲法で保障されていると訴えた。これに対し国側は、被爆2世への遺伝的影響はこれまでのさまざまな研究で認められないとし、請求棄却を求めていた。

 厚生労働省健康局は「主張が認められた。被爆2世に対しては健康診断を実施しており、今後も続ける」としている。

【解説】「科学的根拠」不十分と判断

 被爆2世の訴えを退けた広島地裁判決は、現時点で放射線による2世への健康被害の科学的な裏付けが不十分であることを厳格に判断した結果と言える。

 原告側は、哺乳類のマウスによる実験で遺伝的影響が認められるなど、ヒトへの影響を否定できないと強調。さらに、放射線の健康被害が否定できない場合は被爆者と認めるべきだとした「黒い雨」訴訟の広島高裁判決も踏まえ、主張を展開した。

 しかし今回の判決は、被爆者援護法が一定の科学的知見の下で被爆者を定義したとし、被爆者は「原爆の放射線に直接被曝(ひばく)したことで健康被害が生じる可能性がある者」と指摘。遺伝的影響については研究途上にあり、2世の健康被害の発生は「科学的に承認も否定もされていない」として被爆者と差異があるとした。

 ただ、判決は援護や補償について「国の裁量に委ねられている」とし、国の判断次第で救済は可能だ。2世は全国に30万~50万人いるとされ、被爆者同様に高齢化が進む。健康不安はより増すだろう。国は遺伝的影響の解明に向けた取り組みを急ぐとともに、2世の苦しみに正面から向き合う姿勢が求められる。(堅次亮平)

(2023年2月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ