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連載・特集

『生きて』 ゼネラル興産会長 山下泉さん(1936年~) <13> 経済界での活動

視察基に街の未来提言

 2000年ごろ、広島県や広島市、経済団体などから委員を依頼されることが多くなった。その中で05年に始まった中国財務局の金融行政アドバイザリーが印象深い。

  ≪05年から10年間、金融行政アドバイザリーの委嘱を受けた≫
 日頃の顧客とのやりとりから感じる地場企業の経営環境を基に、「地域密着」を進める地域金融機関の取り組み事例の審査に関わった。全国の財務局が各5人以内で、計約50人を指名する。中国財務局管内は広島大教授、公認会計士、中小企業診断士、商工会の代表と私だった。

 当時、地域金融機関は多くの不良債権を抱えていた。金融庁は地域密着型金融への改革を促すため、金融機関に地域経済の発展に向けた取り組みを文書にまとめて提出させていた。5人で地域への経済効果や永続性を判断し、優秀作品を選んだ。13年間の銀行生活で、金融当局は検査が厳しいという印象しか残っていない。良い取り組みを後押しするという任務を経験し、金融当局の変化を強く感じた。

  ≪08年に広島商工会議所の都市機能強化委員会の委員長に就任する≫
 委員の方々と一緒に熊本などを視察した。先進的な商店街活動の事例として東京、大阪、名古屋も視察した。商店街の推進役や行政担当者から活性化のあり方を教えていただいた。広島でそのまま受け入れるのが難しいことは多いが、勉強する良い機会が得られた。視察先にはどこも、強力なリーダーシップを持った人がいて、町ぐるみで活性化に努力していた。委員会では17年、西区の広島市中央卸売市場のにぎわいづくりや中区の平和大通りの魅力拡充について、県知事や市長に提出した。

 商工会議所ビルの建て替えについても、委員長にならないかと声がかかった。移転先の中区基町一帯は、再開発の際に税制優遇などを受けられる国の特定都市再生緊急整備地域に指定されている。その制度を活用し、約7500平方メートルの用地に31階建て高層ビルなど3棟を建てる。一般道路を挟んだ区画を上空でトンネル状につないだ先進的なビル建設を視野に入れる。完成予定の27年度に私は91歳。できるだけの助言はするが、委員長は辞退した。

(2023年2月9日朝刊掲載)

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