×

ニュース

被爆地に根差し魅力発信 エリザベト音大75周年 川野理事長・学長に聞く

卒業生 幅広い分野で活躍

 中国地方唯一の音楽の単科大、エリザベト音楽大(広島市中区)は11月に創立75周年を迎える。原爆投下から間もない1948年に広島音楽学校として始まり、音楽教育・研究の拠点として地域の文化を支えてきた。川野祐二理事長・学長(63)にこれまでの歩みや今後の展望を聞いた。(石井雄一)

  ―被爆地に根差した音楽教育への思いとは。
 創立者であるイエズス会のエルネスト・ゴーセンス神父には「音楽を通して、原爆で傷ついた広島の人たちを明るくしたい、癒やしたい」との思いがあった。戦前はカトリック幟町教会で働き、米国で音楽を学んだ上で広島に戻り、小さな音楽教室を開いた。幅広い世代から好評だったことから、前身の広島音楽学校の設立につながった。幟町教会に世界平和記念聖堂が建つに当たり、教会に奉仕する音楽家を育成する目的もあったようだ。

  ―これまでの歴史で形態も変化してきました。
 52年に短期大学、63年に四年制大学へ移行し、90年に大学院、93年には私大の音楽大で初めて博士後期課程を設けた。卒業生は約6500人を数え、幅広い分野で活躍している。音楽をする人たちが集う場にもなっており、これからもそうあり続けたい。

  ―節目に当たり、どんな催しを企画していますか。
 東京ではなく、地方で75年も音楽の単科大として生き残ってきた。この機会に発信力を強めたい。大学教員と広島交響楽団が協演する演奏会を来年3月までに計3回予定している。著名な作曲家に依頼してラテン語の宗教合唱曲を生み出す取り組みの一環として、宗教合唱曲集の第2巻を刊行する。50周年以降の歩みをたどる記念誌も発行する。

  ―今後の展望を聞かせてください。
 学びを深める観点で音楽の果たす役割は今後も変わらない。専門性の高い単科大として、他の大学などと連携して地域に還元できることも多い。地方発の音大の魅力を世界や地域に向けて発信し続けたい。

かわの・ゆうじ
 上智大大学院文学研究科修士課程修了。2005年にエリザベト音楽大教授、10年に学長に就任。22年1月に再任され、現在4期目。15年から理事長を兼務する。専門は西洋中世史。

(2023年2月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ