×

ニュース

苦言を呈する側近必要 宏池会元事務総長代行・三ツ矢元衆院議員 国民生活向上の政策を

 首相秘書官の更迭につながった同性婚を巡る差別発言から、政府の緩みが指摘されている。かつて自民党岸田派(宏池会)の事務総長代行として、岸田文雄首相を支えた元衆院議員の三ツ矢憲生氏(72)にはどう映るか。中国新聞のインタビューに「耳の痛いことを言ってくれる側近を置くべきだ」と話した。(聞き手は樋口浩二)

 秘書官の発言は論外だが、その前段に首相が国会で同性婚の法制化は「社会を変えてしまう」と答弁したことに驚いた。私には、首相が同性婚に嫌悪感を持っているようにすら見えた。同性愛を明かす人も増え実態に制度が追い付いていない。「(首相は)古い家族観だな」と失望した。

 先進7カ国(G7)で同性婚制度を整えていないのは日本だけ。5月に広島市である首脳会議(サミット)で議長を務める首相としては恥ずかしいことだ。

 先の首相外遊に同行した長男の翔太郎秘書官の公用車利用もそうだが、官邸の統制が取れていない。何か問題が起きると「緊張感を持って行動する」と釈明するが、うわべだけに見える。耳の痛いことを忠告できる側近や、霞が関ににらみの利く元官僚や学識者を登用してはどうか。

 首相は人の話をよく聞く。ただ、理念が見えず、ふらふらしている。政権を担って1年4カ月。「聞く力」だけでなく、信念を「語る力」が大事だ。丁寧に説明すると繰り返しても、答弁書を読むだけでは響かない。派手さはなくとも、自分の言葉で語れば国民に届くはずだ。

 「異次元の少子化対策」はパフォーマンスに終わらせてはいけない。子ども手当の充実などはあくまで子育て支援で、子どもを増やす本質の対策が肝だ。非正規雇用を正規雇用に転換する政策に本腰を入れ、未来に希望が持てる若者を増やすべきだ。

 安倍晋三元首相が亡くなった。独り立ちする機会だったが、いまだに安倍派の顔色をうかがう「右寄り」の主張が目立つ。宏池会らしい、国民一人一人の生活を向上させる政策を進めてほしい。

みつや・のりお
 三重県伊勢市生まれ。東京大教養学部卒。国土交通省航空局監理部長などを経て、2003年衆院選で旧三重5区から初当選し、連続6回当選。外務副大臣や自民党組織運動本部長代理を歴任し、21年に政界を引退。

(2023年2月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ