×

ニュース

継承へ 高校生・小学生、それぞれの学び 平和学習 

 被爆地広島の学校が取り組む平和学習。原爆投下から70年近い歳月が過ぎ、体験の継承が難しさを増す中で、子どもたちの発達段階に合わせたさまざまな工夫も目立つ。論理的に核兵器廃絶が主張できるよう、ディベートを取り入れた舟入高(広島市中区)と、地元にいる被爆者への聞き取りを基に平和劇を作った三篠小(西区)の取り組みを紹介する。(増田咲子)

舟入高・ディベート

核兵器廃絶 論理探る

 舟入高で1月下旬にあった平和学習の授業。国際コミュニケーションコースを除く2年生320人が九つのクラスごとに、「いかなる状況においても核兵器の使用を禁止する国際条約が締結された場合、日本は批准すべきである」の賛否をめぐって討論した。

 批准すべきか、すべきでないか、二つの立場に分かれ、新聞記事などを基に、双方が意見を述べ合った。批准すべきだとする側は「核兵器が使われれば世界を滅亡させる。なくすべきだ」「唯一の被爆国でありながら、米国の『核の傘』の下にあるのは矛盾している。そこから脱却すれば、説得力を持って世界を核兵器廃絶へ先導できる」と主張した。

 逆に、批准すべきではないとする側は「国防の観点から、日本が核兵器を持てる可能性を残しておく必要がある」などと述べた。

 批准を肯定する側に立った池尻ゆりさん(17)は討論の後、「核兵器の恐ろしさについては学んでいたが、根拠を示しながらデメリットについて論じる大切さが分かった」と話していた。

 ディベートは、被爆の実態を学ぶだけではなく、平和な社会実現に向け、どう行動すべきかを考えてもらうために取り入れた。2年生は、中国新聞社を訪れたり、市教委が平和学習用に作成した教材「ひろしま平和ノート」を読んだりして核問題に関する情報を集め、ディベートに臨んだ。

 担当の新宅淳一教諭(52)は「平和について深く学ぶことで、被爆地広島で育った人間として、国を超え、核兵器廃絶について自分の主張ができるようになってほしい」と話していた。

 同校は、本年度から市教委が始めた平和教育プログラムの実践協力校になった。この日の授業も、他の市立高の平和学習担当の教諭らが見学した。

三篠小・創作劇

被爆者の証言 演じる

 三篠小の5年生123人は今、原爆がテーマの劇「三篠から平和を」(12分)の練習に励んでいる。1年間の平和学習の集大成として、15日の学習発表会で披露する。

 全員が出演する朗読劇で、広島への原爆投下から復興までを描いている。家の下敷きになって亡くなった兄の無念さや、結婚差別を受けた時の思いなど、被爆者から直接聞いた話も盛り込んだ。校内にある被爆クスノキが傷つきながら力強く生きる様子が、周辺に住む人々に希望を与えたことも伝えている。

 「自分のそばにいる家族や友達を大切に」。被爆者が児童に託したメッセージを紹介し、劇はフィナーレを迎える。

 被爆者の証言は昨年10月、地域に住む3人から聞いた。三滝地区にある墓園も訪れ、墓石に刻まれた死亡日や年齢を調べ、1945年8月6日に多くの人が若くして亡くなった事実をあらためて知った。

 劇の制作・上演は、何を学んだかを伝える方法として、みんなで決めた。ストーリーは、「伝えたい」と思った事柄や感想を5年生全員から挙げてもらい、シナリオ実行委員の児童16人がまとめた。

 実行委員の宮城(みやしろ)桜さん(10)は「未来を託された私たちが、原爆で亡くなった人たちの悲しみや怒りを伝えたい」。三根生永遠(みねおい・とわ)君(11)は「原爆の恐ろしさと、被爆に耐えたクスノキの生命力を知ってほしい」と話す。

 担当の福間聖子教諭(32)は「広島に住んでいても原爆は遠い昔の出来事になっている。被爆者に寄り添い自分の問題として原爆を捉えられるようになってほしい」と狙いを説明する。

(2014年2月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ