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連載・特集

『生きて』 ゼネラル興産会長 山下泉さん(1936年~) <15> コロナ禍 

多様性ある商店街 模索

  ≪2020年、新型コロナウイルス禍の影響で広島市中心部の商業ビルが苦境に直面する≫
 商業ビルに入居する小売店、特にアパレルは、消費者の外出自粛の広がりを受けて一気にインターネット通販に切り替え、中区紙屋町・八丁堀地区から撤退した。買い物客もネット通販の便利さに気付いており、この販売方法は当分続くと思う。

 商業ビルにどのような業種を誘致するかは大きな課題である。全国の商店街、百貨店、ショッピングセンターに共通する悩みでもあるが、中四国地方を代表する中区の本通り商店街では深刻な問題。どう乗り越えるか、商店主たちと話し合いを続けている。

 本通りの土地価格は市の商店街の中でも高く、固定資産税の負担も大きい。アーケードがあるため2、3階までしか活用できていないビルが多い。ビル経営を続けるには堅実な計画が必至だ。

 本通りはビルの間口が狭い問題を抱えている物件がまだ多く、共同ビルに建て替える必要がある。今後は裏面の道路側まで含めた大規模な再開発が必要だ。規制緩和が適用される国の都市再生緊急整備地域の制度を活用して高層ビルにし、1~3階は店舗にしてにぎわいを創出。高層階は住居にするなど、高度利用を模索する時代になっている。

 本通りは平日でも4万~5万人が通るといわれ、住居としても一等地。都心回帰で利便性の高い地域に住みたい人は増加している。近年、中心部の商店街に近い立地でマンション用地の売買をいくつか仲介し、いずれのマンションも人気が高かった。本通りでも期待できそうだ。

 本通りは今後、衣料品中心ではなく、食料品や雑貨の販売、医療機関など多様性のある店舗で構成し、市場のような庶民的な通りになるだろう。22年9月に改装した、県内の食品や土産物を販売する「ひろしま夢ぷらざ」が良い例。2週間ごとに店頭の催事が変わり連日大盛況だ。

 また、本通り周辺には金座街、並木通り、中央通り、中の棚など商店街が複数ある。それぞれの商店街がイベントをしてもインパクトが弱い。複数の商店街が協力して中心街を盛り上げることも重要だろう。

(2023年2月11日朝刊掲載)

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