×

連載・特集

『生きて』 ゼネラル興産会長 山下泉さん(1936年~) <16> 未来へのバトン

歩行者優先が緊急課題

 広島市の中心商業地である中区紙屋町・八丁堀地区は半径約500メートルに収まる。この徒歩圏内のエリアをさらに活性化するには、西側の中心地となる紙屋町交差点で地上を横断できるようにすることが緊急の課題だ。そごう広島店前に位置し、2001年4月に紙屋町地下街シャレオの開業と同時に、横断歩道が廃止された。地上に人の流れやにぎわいがあってこそ、地下にも買い物客が入っていく。他の大都市では車優先から歩行者に優しいまちづくりに変わってきているのが現状だ。

 中心部で再開発に向け活動しているが、実現には10年かそれ以上を要する。その間をどうするか、課題は多い。新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻など、世界は経験したことのない転換期を迎えた。経済の混迷は長期化が予測され不動産市場も慎重な局面になる。

 すでに資材の値上がりや品不足に加えて、工事の長期化により建築費がコロナ禍前より3割上昇した。これからビルの建て替えをする人や住居を購入しようとする人には、さらに金利上昇という重荷がのしかかろうとしている。再開発の計画も事業として成り立つか、慎重に検討する必要がある。

  ≪2021年4月、84歳で会長に退いた。社長職は修道中・高の後輩で、長年共に事業に取り組んできた当時専務の山本一氏(74)に譲った≫
 最後に、皆さまにお礼を申し上げたい。設立50年を迎えられたことは数々のご支援のおかげであり、心から感謝しております。22年2月に急に悪性リンパ腫になりましたが、医師団の尽力で5カ月後には完治しました。仕事を再開し、日本ハンドボール協会の顧問としてリーグのプロ化に向けた組織改編にも取り組み、趣味のゴルフも楽しんでいます。

 広島の街は、築50年を迎えたビルが多く、建て替えの検討が進み、変化の時を迎えています。これからも戦後100年以降の時代をつくる次の世代により良いバトンを渡せるよう努める所存です。=おわり (この連載は報道センター経済担当・松本真由子が担当しました)

(2023年2月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ