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かすむ原発計画…町議選も停滞感 山口県上関 11日告示

 中国電力が原子力発電所建設を計画する山口県上関町で11日、町議選(定数10)が告示される。これまでは原発の是非が最大の争点だったが、安倍晋三首相は上関原発を「現在のところ全く想定していない」などと発言。予定地での準備工事も福島第1原発事故後に中断している。1982年の計画浮上以降、8回目の改選には停滞感もつきまとう。(井上龍太郎)

過疎高齢化 対応が急務に

 年の瀬の上関町。安倍首相の地元民放での発言に波紋が広がった。上関原発などの新増設を「今は考えていない」。首相は1月6日の年頭会見でも既存原発の再稼働を優先する考えをあらためて強調した。

 昨年12月に示された、原発活用方針を明記したエネルギー基本計画の素案は新増設に含みもあっただけに首相の発言は推進派には大きな衝撃だった。

 過去7回の改選はいずれも推進派が過半数を確保。町は原発財源で高齢者保健福祉センターや温浴施設などを整備してきた。

 だが、中電は福島の事故が起きた1年後の2012年3月に「12年6月本体着工、18年3月運転開始」としていた上関原発1号機の目標を「未定」にした。

 全国に広がった脱原発の機運。「何もかもが変わった。上関原発もわれわれの力でどうこうなる話じゃなくなっている」と推進派の立候補予定者はこぼす。

 別の推進派の予定者も「原発を語る時期じゃない。子育て施策や高齢者福祉の充実を訴えて支援をお願いしている」と話す。4年間で総額25億円に上る国の原発特別交付金は12年度で町への支給が終わった。中電は07年から5回、計24億円を町に寄付してきたが、10年12月を最後に行っていない。

 上関町は室津半島の南端に位置する半農半漁の町。若者が働ける企業はほとんどない。町人口は昨年末時点で県内最少の3281人。高齢化率は51・05%。計画浮上当時から人口は半減し、高齢化率は倍増した。町の13年度一般会計当初予算も前年度比7・3%減の38億6900万円に縮小している。

 深刻な過疎高齢化に直面する町の現実。町議の定数も2減って今回は10議席の争いになる。「国策と信じて推進してきたが、国が方針を示さなければ説明もできない」。推進派予定者の一人は後援会のしおりから今回、原発に関する表記を消した。反対派の予定者は「これまでのように原発反対だけを主張する選挙にはしない。足腰の弱ったお年寄りが増えた」とため息をつく。先の見えない国の原子力政策。双方が翻弄(ほんろう)されながら選挙戦を迎える。

(2014年2月6日朝刊掲載)

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