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佐村河内さん、別人作曲は「18年間」 ゴーストライターの大学講師きょう会見

 広島市佐伯区出身の被爆2世として、両耳が聞こえない作曲家で知られる佐村河内(さむらごうち)守さん(50)=横浜市=の「交響曲第1番 HIROSHIMA」などの楽曲は、十数年前から特定の別の人物が作っていたと、佐村河内さんの代理人の弁護士が5日、明らかにした。

 フィギュアスケートの高橋大輔選手(27)=関大大学院、岡山・倉敷翠松高出=がソチ冬季五輪のショートプログラムで使用予定の楽曲「ヴァイオリンのためのソナチネ」も、佐村河内さんの作曲ではないという。

 桐朋学園大非常勤講師の新垣隆さん(43)が「佐村河内氏のゴーストライターを18年間にわたってやっていた」と公表、東京都内で6日に会見すると発表した。

 広島市の松井一実市長は5日に記者会見し、前市長時代の2008年11月に授与した市民賞について「事実を確認した上で、対応を見直す必要があるか検討したい」と述べ、賞の取り消しも示唆した。

 レコード会社の日本コロムビアは、佐村河内さんのCDの出荷やインターネット配信を停止した。

 佐村河内さんの代理人は「(作曲した)人物の側にも作曲者として表に出づらい事情があると聞いており、佐村河内が自身を単独の作曲者と表記するようになった」と説明。佐村河内さんは言い訳のできないことと、深く反省しているという。

 公式サイトなどによると、佐村河内さんは4歳からピアノを始め作曲を独学。「バイオハザード」などのゲーム音楽を手掛けた。35歳で聴力を失った後も絶対音感を頼りに作曲を続けたという。

 被爆者への思いを込めたとされる「交響曲第1番」は、2008年に広島市で開かれた主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)の記念コンサートで披露された。CDはクラシック界では異例の10万枚以上の大ヒット。「現代のベートーベン」と呼ばれ、テレビや新聞で取り上げられた。

 佐村河内さん側は、週刊文春からこの問題の取材を受けたことで公表に踏み切ったとみられる。

広島被爆2世「核廃絶願い交響曲」 別人作曲の佐村河内さん

 別人による作曲が明らかになった佐村河内守さんは、NHKスペシャル「魂の旋律~音を失った作曲家~」などで大きく紹介され、クラシックファン以外にも知られる存在となった。

 広島の被爆2世として、核兵器廃絶を願って作曲したとされる「交響曲第1番 HIROSHIMA」のCDが大ヒット。「ヒロシマの名を冠した曲が世界で広く、長く受け入れられれば、苦しみにも価値を感じられる」と語っていた。

 昨年3月には東日本大震災の被災地にささげた「被災地のためのレクイエム」が宮城県石巻市で披露された。著書などに「高校生の頃から聴覚障害に苦しみ、30代半ばで全く聞こえなくなった」と記す苦難の歩みが曲のテーマや調子と重なり、感動を誘ってきた。

 CDで演奏を担当した東京交響楽団や、コンサートで奏でた広島交響楽団の関係者は「残念だ」と話し、衝撃を受けていた。

(2014年2月6日朝刊掲載)

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