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猿猴橋 往時の姿に復元 被爆70年 広島市が記念事業化

 大正末期の1926年に建造され、戦前まで豪華なワシのブロンズ像があったJR広島駅(広島市南区)近くの猿猴橋。市は被爆70年の2015年、建造当時の姿に復元させる。6年前から復元に向け活動してきた住民グループは「広島の玄関口の新名所になる」と期待する。(加納亜弥)

 建造当時の猿猴橋は、ブロンズ製のワシをてっぺんに抱いた親柱と、猿と桃の透かし彫りがあしらわれた欄干が特徴。その華麗さから「広島一の橋」と呼ばれた。

 これらの装飾は戦時中、兵器製造のため国に金属供出された。石造りになった橋は原爆の閃光(せんこう)を浴びたが、壊滅的な被害は免れた。

 地元で復元への夢が芽吹いたのは1996年2月。橋の近くに住む花輪敬三さん(80)と増本光雄さん(72)が、古い猿猴橋の水彩画を見つけたのがきっかけだった。賛同の輪は広がり、08年に9人で「猿猴橋復元の会」を結成。現在は広島市立大(安佐南区)の協力を得て、親柱を再現したモニュメントを制作している。

 市はこうした地元の盛り上がりに着目し、被爆70年の記念事業の一つに位置づけた。6日発表した14年度当初予算案に設計費として2千万円を計上、15年度の完成を目指す。市道路課は「橋を生かしたまちづくりのアイデアを地元と一緒に練りたい」とする。

 猿猴橋の周辺では、広島駅南口B、Cブロックの再開発が16年に終わり、街の姿は大きく変わる。復元の会の大橋啓一会長(66)は「戦前から原爆投下、そして復興と広島の歴史を背負った橋。多くの人が興味を持って見に来てほしい」と話している。

(2014年2月7日朝刊掲載)

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