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多様なヒロシマに光 同人誌あいだ発刊5周年

 「広島同人誌あいだ」が発刊5周年を迎えた。戦争や被爆の記憶、植民地主義、ジェンダー、マイノリティーの歴史…。タイトル通り、普段は光が当たりにくい社会の「あいだ」に目を向け、思考を重ねるユニークな同人誌だ。

 先月発行された第5号は、被爆者の豊永恵三郎さん(86)が高校教員時代、広島の教育現場で初めて朝鮮語講座を設けた背景や経緯を紹介。昨年93歳で亡くなった在日韓国人被爆者李鍾根(イ・ジョングン)さんを悼む文章のほか、在日朝鮮人女性と日本のフェミニズムに関する論考、第2次大戦中の中国南京で看護師として従軍した体験を語り続けた故上田政子さんの評伝、俳句など多彩な原稿から成る。

 編集・発行責任者は、1986年から20年近くミニコミ紙「月刊家族」を発行してきたひろしま女性学研究所(中区)主宰の高雄きくえさん(73)。「自分の考えを言語化し書くことを大切にしたい。様式に縛られない媒体を」と18年に創刊し、年1回発行してきた。

 同人は同研究所に関わってきた男女7人ほど。あえて掲げていないが、広島とは切っても切れない原爆・平和は頻繁に題材となる。高雄さんは「あいだを考えるということは物事を多角的に見ることであり平和も含意している」と語る。

 自分と他者、国家と個人、加害者と被害者などさまざまな「あいだ」、すなわち関係性を考えることでこれまで語られてこなかった問題や歴史を可視化する同人誌をめざす。賛同者には広く門戸を開く。1部300円。問い合わせ・注文は郵便かメールで。〒730-0001広島市中区白島北町16の25。takaosan@gmail.com(森田裕美)

(2023年2月20日朝刊掲載)

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