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社説・コラム

社説 北朝鮮ICBM発射 度重なる挑発 許されぬ

 国際社会を挑発する北朝鮮の暴挙である。先週末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級のミサイルに続き、きのうは短距離弾道ミサイルを発射した。

 ICBM級の発射は昨年11月以来で、北海道西方の日本海に落下した。日本の排他的経済水域(EEZ)内である。

 狙いは容易に推測できる。米国と韓国が実施した合同訓練と、3月中旬に予定されている大規模な合同軍事演習への対抗措置のつもりだろう。

 北朝鮮が核兵器・ミサイル開発を強行し続けているから、周辺国が警戒を強めているのだ。自国は被害者と言わんばかりの北朝鮮の対応は見当違いも甚だしい。断じて許されない。

 今回のICBM級ミサイルは通常より高い角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で最高高度約5800キロに達し、1時間以上も飛んだという。米全土に届く1万4千キロを超す射程を持つと防衛省はみている。「わが国、地域、国際社会の平和と安定を脅かす」と政府は強く非難した。当然である。

 ドイツで会合を開いていた先進7カ国(G7)の外相はそろって北朝鮮を指弾し、連携を確認した。国連のグテレス事務総長も、挑発を自制するよう北朝鮮に求める声明を発表した。

 看過できないのは、韓国大統領府が指摘している北朝鮮国民の惨状だ。深刻な食糧難で餓死者が出ているという。それを指導者たちが放置しているのなら国を率いる資格はない。

 自ら固執する軍事パレードや核・ミサイル開発に多額の資金をつぎ込んでいるのか。射程がさらに長いICBMの実験を重ねているほか、従来の液体燃料型だけでなく、発射の兆候を探知されにくい固体燃料型エンジンを搭載した新型ICBMの開発にも乗り出している。

 間もなく1年になるロシアによるウクライナ侵攻で、北朝鮮に対する国際社会の関心は薄れがちだ。とりわけ米国にとって、北朝鮮対応の優先順位は低い。そうした状況への北朝鮮のいら立ちが、度重なる挑発を招いているのではないか。

 7度目の核実験を準備中だともみられている。さらなる暴走を食い止めるには、国際社会の協力が欠かせない。日本は、米国や韓国とともに、国際連携を強化していくべきである。

 きのう、わが国の情報伝達態勢のほころびが改めて明らかになった。ミサイルは2発だったのに、海上保安庁からは情報が3回発表された。内閣官房から海上保安庁への情報送信に重複があったためという。

 昨年は、緊急情報を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)を巡って不備が相次いだ。昨年10月、東京都の島しょ部に誤って避難を呼びかける発信をしていた。11月には、ミサイルは太平洋を通過したとみられると発信したが、実際は通過しておらず情報を取り消す事態に。しかも初報を出したのは通過予想時刻の2分後。発令遅れも問題となり、今夏運用に向けて改修に乗り出したところだった。

 国民が冷静に判断し行動できるよう、信頼のおける警戒態勢を整えることも不可欠だ。ただそれだけでは不十分だろう。ミサイルを撃ち込まれるような事態を防ぐ国際環境づくりが急がれる。求められているのは岸田政権の外交努力である。

(2023年2月21日朝刊掲載)

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