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社説・コラム

「首脳と被爆者 面会を」 IAEAタリク・ラウフ元検証安全保障政策課長

露批判に終始せぬ対応必要

 ロシアのウクライナ侵攻から24日で1年を迎えるのを前に、国連訓練調査研究所(ユニタール)の会合で広島市を訪れた国際原子力機関(IAEA)のタリク・ラウフ元検証安全保障政策課長に、核軍縮を巡る現状や今後の行方を聞いた。5月に市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)を見据え、ロシア批判に終始しない各国首脳の対応の必要性を説いた。(小林可奈)

  ―核を巡る現在の国際情勢をどうみますか。
 ウクライナ戦争により核軍縮への努力は弱まった。ただ、「核の脅し」や保有国による非保有国への攻撃は、今回のロシアにとどまらない。他の保有国も存立が脅かされれば核兵器を使い得るという政策を取り、米国は2003年にイラクへ侵攻するなどした。現下だけでなく、全体像を見通し、考えるのが大切だ。

  ―どうすれば国際社会を核軍縮に導けますか。
 ウクライナ戦争を終わらせる必要がある。今や、ロシアに対する米国、北大西洋条約機構(NATO)の代理戦争だ。ロシアと米国の関係は悪化し、核兵器削減への新たな合意の見通しは立っていない。核兵器の近代化も進んでいる。再軍備に焦点が当たり、日本さえ防衛費を増やしている。

  ―その中、サミットのため、各国首脳が広島に集います。
 原爆が投下され、多くの人が犠牲になった広島は特別な場所だ。首脳たちは「打倒ロシア」と紛争の火をあおるのではなく、リーダーシップを発揮して鎮火の方策を見いだしてほしい。また現在の軍縮の問題の一つは、人間性を失っていることだ。首脳たちが被爆者に会うのが大切だ。

  ―今年、核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会など核を巡る国際会議も相次ぎます。
 (前回のNPT再検討会議が決裂した)昨年8月からの暗雲は続き、準備委員会が合意に至ることはあまり期待できない。日本は友好関係にある国の批判を心配しているようだが、核兵器禁止条約の締約国会議には少なくともオブザーバー参加してほしい。

(2023年2月22日朝刊掲載)

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