×

ニュース

原爆瓦 競売に 英元軍人出品 「52年広島で入手」

 広島に投下された原爆で焼けただれた屋根瓦の破片が11日、英中部リンカーンで競売に掛けられる。現地の競売会社「トーマス・モーアー・アンド・サン」が2日、明らかにした。同社は「極めて珍しい出物で、値段を付けるのは難しい。世界中の第2次大戦記念品収集家や歴史家の注目を集めるだろう」と話しているが、広島の被爆者には不快感をあらわにする声が出ており、議論を呼びそうだ。

 出品者は元英空軍の軍人(81)。香港に駐留していた1952年に広島市へ旅行し、爆心地に近い西蓮寺(広島市中区)を訪問。住職からこの瓦をもらったという。住職の手書きの証明書には「この瓦は原爆の爆発時に10分の1秒間、6千度の熱を浴び、表面がざらめ状になった。西蓮寺敷地内で発見された」などと書かれている。

 元軍人は「(瓦などは)長年引き出しの中で眠っていたが、私は先が短いと思うし、興味がある人がいるかもしれない」と出品の動機を語った。

 瓦は、広島の爆心地を写した絵はがきなどとともに競売される。

 原爆資料館(広島市中区)元館長で、自らの被爆体験も証言してきた高橋昭博さん(77)は「被爆瓦は売り買いするような物ではなく、オークションに掛ける感覚が分からない」とあきれた様子。「人に譲りたいなら、ただで差し上げればいい。もともと買った物でないなら、なおさらだ。日本人、外国人にかかわらずおかしいと思うし、納得いかない」と話した。

「譲渡話知らぬ」 西蓮寺関係者

 広島市中区の原爆ドームの東隣にある西蓮寺の関係者は3日、取材に「(元英空軍の軍人が広島を訪れたという)1952年当時は先々代の住職だったと思うが、被爆した瓦を人に譲ったという話は聞いたことがない」と話した。

(共同通信2009年7月3日配信、7月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ