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連載・特集

[あれから、どうなん 現場再訪] ウクライナ避難家族支援(三次市)

いつでも暮らしの力に

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって24日で1年になる。三次市にはウクライナ東部ドネツク州から昨年春に逃れてきた家族が暮らし、市民もサポートに力を注いできた。願うのは「一日も早い戦争終結」。戦禍が長引く中、思いをさらに強くしている。(林淳一郎、石井千枝里)

 避難してきたのはイリーナ・ブワイロさん家族。昨年4月、市内在住のいとこを頼り夫と子ども3人の一家5人の生活が始まった。

 「主食は何だろう」。源光寺(西酒屋町)の福間玄猷住職(51)は、市のホームページで避難者の支援を呼びかけていると知った。聞くとジャガイモ。農家もいる門信徒に尋ねてみたが、収穫期ではなかった。「善は急げ」と5月に段ボール1箱分を購入し、市を通じて届けた。幼い子どもがいると聞き、7月に粉ミルクと紙おむつも寄付した。

 「この戦争に嘆いてばかりでいいのか。私たち大人の行動を子どもたちは見ている」。地元の酒河小で絵本の読み聞かせも続け、戦争に関する作品を紹介することも。「できる支援はいつでもしたい。暮らしの力にしてほしいんです」

 この1年、市に事務局を置く三次国際交流協会には計20件の物資や寄付金が寄せられた。自転車やパン焼き器、チャイルドシート…。寄付金31万6千円のうち10万円はイリーナさん家族に贈った。残りは新たな避難者支援に充てる予定だ。市も1人に月3万円の支援金を支給。1年限定だが、市は「求めや困り事を聞いて対応を検討したい」とし、日本財団(東京)の支援金も仲介するという。

 こうした支援にイリーナさんは「爆撃に驚かず、暖かい家で子どもの笑顔を見て過ごせるのは幸せ。今は食料や服も十分にあり、温かさももらった」と感謝する。「現地の子どもたちは苦しんでいる。足りない物を送って助けたい」と母国への思いも募らせる。

 平和を願う市民の輪も広がっている。Cafe地球屋(三次町)の佐々木洋子さん(68)は、「NO WAR」と記し、「戦争が終わるまで」と店先に掲げたウクライナ国旗を外せずに1年を過ごした。それでも有志と月2回、市内の歩道に立ち、スタンディング活動も重ねているという。

 15人ほどが集う。平和の歌を口ずさみ、手縫いのウクライナ国旗を持参する人も。「武力で平和は訪れない。みんなで一つになって発信したい。思いは『ウクライナに平和を』の一点です」と力を込める。

(2023年2月24日朝刊掲載)

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