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露「核の脅し」で揺さぶり ウクライナ侵攻 あす1年 日米首脳らと言葉の応酬

 核超大国ロシアのプーチン大統領はウクライナに侵攻後、核兵器の使用を繰り返し示唆し、国際社会を揺さぶっている。米国とロシアの唯一の核軍縮合意である新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止も21日に表明した。侵攻から24日で1年。日米の首脳たちはけん制するメッセージを発し、核を巡る言葉の応酬は続いている。(小林可奈)

 「ロシアは核保有国。干渉したり脅威を与えたりする者は歴史上、前例のない結末を迎える」。侵攻が始まった昨年2月24日、ロシアのプーチン大統領はこう演説した。米ロ英仏中の核保有五大国首脳が核戦争回避の責務をうたった1月の声明から2カ月足らず。逆行するかのような発言を重ね、世界各地で不安をあおっている。

 侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は、7月に東京であった講演会にオンラインで参加し「核兵器を持つ独裁者の脅迫に対処できるか。私たち次第だ」と訴えていた。ロシアが9月末にウクライナ東南部4州併合を一方的に宣言すると、欧米の核同盟である北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を「断固たる措置」と表明。「核抑止力」への依存姿勢を強めている。

 そのNATOの中心で、ウクライナ支援を続ける米国のバイデン大統領は10月に「このままでは(米ソが核戦争の瀬戸際に陥った)キューバ危機以来、初めて核の脅威に直面する」と指摘した。世界最終戦争を意味する「アルマゲドン」にも言及。ロシアと並ぶ核超大国のリーダーが、ここまで踏み込んだ意味は重い。

 こうした中、岸田文雄首相は、歴代首相で初めて出席した8月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で「ロシアの行ったような核兵器による威嚇、ましてや使用はあってはならない」とロシアを名指しで非難。今年1月には日米首脳の共同声明に「ロシアによる核兵器の使用は人類への敵対行為」との文言も盛り込んだ。ただ、米国の「核の傘」に頼る被爆国は、ロシアの「核の脅し」に歯止めをかけられていない。

 広島市立大広島平和研究所の加藤美保子講師(現代ロシア外交)は4州併合宣言などを踏まえ「昨年の秋以降、核使用の可能性がより認識される言動がロシア側に増えた」と分析する。先進7カ国(G7)がいずれもロシアから「非友好国」に指定される中、5月のG7広島サミットに向け「G7だけでなく、世界共通の利益として核兵器不使用、核軍縮を訴えることが大切だ」と日本の役割を説く。

(2023年2月23日朝刊掲載)

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