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露の新START履行停止 被爆者「核廃絶に逆行」

 ロシアのプーチン大統領が米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を一方的に表明したのを受け、広島、長崎の被爆者たちは22日、核軍縮の停滞へ危機感を高め、怒りの声を上げた。

 「『核兵器は廃絶しかない』と訴えてきた被爆者の願いと逆行し、断じて許せない」。広島県被団協理事長で、日本被団協の箕牧(みまき)智之代表委員(80)は力を込めた。

 プーチン氏は21日、連邦議会に対する年次報告演説で条約の履行停止に言及。昨年12月に、核兵器搭載可能な長距離戦略爆撃機が配備されるロシア南部の空軍基地などがウクライナ側の無人機(ドローン)で2度攻撃されたのを念頭に、条約が定める核施設の査察は受け入れがたいとした。

 「戦争の行き着く先が核兵器使用だと改めて考えさせられる」と受け止めたのは、長崎で被爆した日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(90)。「核兵器を圧倒的に持つ米ロはもともと減らす考えがないのだろう。周りの国が言っていくしかない」と強調した。

 一方、プーチン氏は演説で「米国が新型核弾頭の開発を行っているとの情報がある」と指摘。核実験の実施準備を整えるよう国防省などに指示する考えを示した。対立する北大西洋条約機構(NATO)全体の核戦力を考慮する必要があるとし、核軍縮の協議再開には米国のほか英仏の参加が不可欠との認識も示した。

 もう一つの広島県被団協の佐久間邦彦理事長(78)も「核兵器を必要とするロシアの態度が明らかになった」と非難。加えて、米英仏が参加する先進7カ国首脳会議(G7サミット)を広島市で開く日本政府に対し「米ロ間の『橋渡し』役を果たし、条約の履行を促す体制づくりに努めてほしい」と求めた。(小林可奈、中川雅晴)

(2023年2月23日朝刊掲載)

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