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栗原貞子さんの未発表詩収録 足跡たどる本出版

 原爆詩「生ましめんかな」で知られる広島市出身の詩人栗原貞子さん(1913~2005年)の足跡をまとめた「人類が滅びぬ前に」=写真=が刊行された。広島文学資料保全の会(土屋時子代表)が確認した未発表詩やゆかりの人による論考などを収め、福島第1原発事故後も核を手放せないでいる人類の今を戒める内容となっている。

 栗原さんの生誕100年だった昨年、同会は同市内で資料展などを開催。資料を整理する中、未発表の詩を見つけ、出版を決めた。

 掲載したのは08年以降確認した未発表の詩21編。米国追従の日本政府首脳を痛烈に批判する「舌の男」など厳しい主張の一方、妹の死を悼む「妹よ、安らかに眠れ」、孫への希望をうたう「原語」など他者への愛情がにじむ詩も多い。

 専門家の論考に加え、「生ましめんかな」で「赤ん坊」のモデルとなった女性への聞き書き、孫による追想も収め、「反戦反核の闘士」としてのみ語られがちな栗原さんの生活者としての姿にも触れることができる。

 タイトルは、栗原さんの詩から採った。同会の池田正彦事務局長は「今ほどこれらの言葉が現実味を帯びている時はない。一貫して反核を訴えた栗原文学の全体像を知る手掛かりにしてほしい」と話す。千部発行。A5判、135ページ。希望者には千円で分ける。同会Tel082(291)7615。(森田裕美)

(2014年2月8日朝刊掲載)

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