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ヒロシマの声 NO NUKES NO WAR] 祖母の体験重なる惨状 富永幸葵(とみなが・ゆうき)さん(25)=東京都

  ≪ダンサーとして東京都内で活動する広島市出身の被爆3世。11歳だった2009年、国内外で体験証言を続けた祖母の岡田恵美子さん(21年に84歳で死去)と渡米し、核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会が開かれていた国連本部で核兵器廃絶を訴えた。8月6日に広島市内で平和イベント「EO PEACE(平和を呼ぶ)」を開くなど、祖母の信念を受け継ぐための模索をしている。≫

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 空襲警報が鳴り、防空壕(ごう)へ逃げるウクライナの大人と子どもたち…。テレビが映し出す光景は本当にショックです。おばあちゃんから聞いた被爆体験と重なりました。

 広島の街は、無残な姿の遺体でいっぱいだったといいます。空が炎で真っ赤に染まっていた記憶がつらく、戦後も夕日を見るのを嫌がって。「12歳だった姉は建物疎開に『行ってきます』と出かけたきり」、と繰り返し話していました。

 「あなたたちには戦争も被爆も体験してほしくない」。そう語り続けたおばあちゃんは突然亡くなりました。私に何ができるのか。悩みました。背中を押してくれたのが「自分の得意なことで伝えなさい」という生前の言葉です。

 ダンサーとして若者を巻き込み行動しようと、昨年とおととし、広島の原爆の日に「EO PEACE」を開催しました。歌やダンスの発表、露店も。「犠牲者を追悼して静かに過ごすべき日だ」とも言われ思い悩みましたが、私たちなりの追悼と平和への思いを表しました。会場となった市中心部の公園に足を運んでくれた多くの親子連れの姿に、「これこそが平和」と実感しました。

 でも、ウクライナでは戦争が続いています。ロシアのプーチン大統領に、おばあちゃんの体験を聞いてほしい。核兵器は威力として知られていても、どれだけ一人一人の人間を苦しめ、人生を狂わせるのかは分かっていない。核兵器を持つ国のリーダーたちにそう伝えたいのです。(聞き手は湯浅梨奈)

(2023年2月25日朝刊掲載)

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