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幼児に平和教育必要9割 比治山大の不動さん卒論 広島市内公私立園調査

 広島市内の幼稚園が取り組む平和教育について、比治山大(東区)4年の不動美咲さん(22)=呉市=が調べて卒業論文にまとめた。ほとんどの園が幼児期に平和教育を行う必要性を認識する一方、目標や内容の捉え方には大きな違いがある実態が明らかになった。(宮崎智三)

 平和教育の必要性は、質問に答えた公私立46園の9割近い41園が「必要」と回答。理由として「幼児なりに平和の意味を考え意識し実践していくことが大切」「広島で育つ幼児に平和の大切さを伝えていくのは義務だ」などが挙がった。

 ただ、平和をテーマに具体的に取り組んでいる園は74%に当たる34だった。被爆体験の継承も平和教育の重要な内容と考える園がある半面、日頃の保育の中で命や思いやりの大切さを伝えることが平和教育の中心と捉える園があるなど、考え方の開きも背景にある。

 取り組みの具体的内容では、絵本・紙芝居の読み聞かせや折り鶴作り、慰霊碑などへの参拝が目立った。有効と思う絵本・紙芝居は「伸ちゃんのさんりんしゃ」「かわいそうなぞう」「おこりじぞう」が多く、そのほか幼児期に有効な教材では「被爆体験を聴く会」「千羽鶴、折り鶴作り」などが挙がった。

 課題としては「祖父母も戦争を経験していない子どもがほとんど。エピソードを聞いても、ぴんとこない。伝えるのが難しくなりつつある」などがあった。

 まとめとして、原爆や戦争を直接取り上げるのか、生命尊重や思いやりの心を育て小学校以降の平和教育につないでいくのか、幼児期に行うべき平和教育の目標や内容を整理・検討することが必要だと指摘している。そのため、各園の取り組みなど情報交換の場を設け、課題や解決策について共通認識を持つ▽原爆や戦争についてうまく伝えるため、ビデオや歌、絵本、紙芝居などの教材の積極的開発―も提案している。

 不動さんは「原爆関連の内容を取り上げていない園が予想以上に多く驚いた。考え方の違いを含め平和教育の奥深さが分かった」と話している。春から呉市内の幼稚園で働く予定。

 調査は昨年8~10月、広島市内103の公私立幼稚園に8項目の質問用紙を郵送。46園から回答を得た。

実態判明に意義

 指導した森川敦子准教授(教育学)の話 若い世代が平和教育に興味を持つこと自体喜ばしい。幼稚園での現状調査は先行研究が少なく、実態が明らかになった意味は大きい。

(2014年2月10日朝刊掲載)

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